大和総研副理事長の川村雄介氏は、4月27日、国家基本問題研究所の企画委員会にて、わが国政府が推進してきたクールジャパン戦略を総括し、その展望について語り、その後櫻井理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。
川村氏は、わが国が海外で人気の高い食品や文化的コンテンツを発信していく基盤となるクールジャパン機構について、その創設の経緯や現在に至るまでの実績について、自身が社外取締役として海外需要開拓委員会委員を務めている経験をもとに詳しく解説した。
そもそもクールジャパン戦略とは、平成25年に閣議決定された「日本再興戦略」のことで、海外市場獲得のための戦略的取り組みとして位置づけられた。つまり日本の豊かな文化を背景とした様々なコンテンツ、日本食や日本酒などの「日本の魅力」を効果的に海外発信し、海外における需要を取り込む国家戦略のことをいう。そのための中核として官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」が設立され、活動してきた。
機構による投資対象としては、たとえば、エンターテインメント番組制作(台湾、タイ、インドネシア、ベトナム)では、現地企業とタイアップして日本産品を紹介する番組を制作、放送するとともに、現地のショッピングモールで物販などのイベント開催も想定している。あるいは、ミヤンマーの地上波放送では、現地大手メディアやNHK関連会社とともに地上波放送設備を整備して、そこから日本コンテンツを配信するというものもあるとのこと。
ただし、ASEAN諸国における音楽やドラマ映像などのコンテンツ・ビジネスの世界で日本は、韓国や中国の後塵を拝しており、完全な出遅れ感が否めないのが現状であるとも。これまでも、失敗した投資はあるが、そこから巻き返すためには、失敗を無駄な投資と考えず、貴重な教訓としていく姿勢が大事だという。そのためには、現地のニーズをいかに素早く的確にキャッチできるかが今後の戦略上重要だと分析した。
いずれにしても、このようなソフトパワーを海外に展開していくことは、海外市場の取り込みというだけでなく、わが国の文化外交を支えるものとして、戦略的に推進する意義は大きいとのこと。
川村氏は、1977年東京大学法学部卒。同年大和証券入社。1997年同社資本市場本部シンジケート部長、2000年長崎大学教授、2007年ジャズダック証券取引所社外取締役、2009年一橋大学大学院客員教授などを経て、2012年から現職。政府と民間企業が共同出資するクールジャパン機構の社外取締役も務め、証券市場、金融に関する著書多数。
(文責 国基研)