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2019.05.17 (金) 印刷する

「山鹿素行の『中朝事実』― 民族意識の先駆 ―」 荒井桂 郷学研修所・安岡正篤記念館副理事長兼所長

 荒井桂・公益財団法人郷学研修所、安岡正篤記念館副理事長兼所長は、5月17日、国家基本問題研究所の企画委員会におけるゲストスピーカーとして、山鹿素行の『中朝事実』を題材に、安岡教学の視点をもって日本精神などについて語り、田久保忠衛副理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。
 荒井所長は、まず『中朝事実』という書物がどのようなものかを説明した。すなわち、江戸初期の儒学者・山鹿素行(1622~1685年)の著述で、吉田松陰をはじめ維新の志士にも影響を与え、乃木大将座右の書としても有名。学習院長を長く務めた乃木大将が殉死する二日前、後の昭和天皇となられる皇太子に、中朝事実を献上したというエピソードも紹介し、後世に伝えるべき価値のあることを強調した。
 所長によると、素行が活躍した当時、支那は世界の中心にある文化大国、すなわち「中華」と自称していた。日本でも、「中華思想」が蔓延し、支那崇拝、自国卑下の風潮にあった。しかし素行自身は、日本こそ文化的・政治的にも「中華」であると自負していた。そこで、言葉の混同を避けるため、日本を「中華」ではなく「中朝」と呼称し、日本書紀など古典を引用しながら論評を加え『中朝事実』という書物を著したという。
 『中朝事実』は全13章から構成され、最初の「天先章」では天孫降臨をはじめとする神話が皇室へと結びつく歴史が、第2章「中国章」では日本こそが中華であると強調し、第3章「皇統章」では天照大神から続く皇室の伝統を、その他、人材任用の在り方、治平外交の要は礼にあること、など多方面にわたり、日本の特質が説かれているとのこと。
 安岡教学に私淑する荒井所長は、激動する国際情勢の中で、国の在り方や国民の意識に思いを馳せる。社会を牽引するリーダーに、青少年の心のバックボーンに、日本人としての誇りや自信、勇気、未来への意欲があるのかと。歴史学者E・Hカーが、「歴史とは過去と現在との間の尽きることを知らぬ対話である」と述べるように、今こそ『中朝事実』に著される日本の歴史や伝統を正しく学ぶことで日本の活路を見出すことができると確信し、また今を生きる我々が為さねばならない道であるとした。
 荒井所長は、昭和10年、埼玉県生まれ。昭和33年、東京教育大学文学部東洋史学専攻卒。以来40年間、埼玉県にて高校教育及び教育行政に従事。平成5年から10年まで埼玉県教育長を務める。在任中、国の教育課程審議会委員及び経済審議会特別委員等を歴任。16年6月から公益財団法人郷学研修所・安岡正篤記念館副理事長兼所長に就任。安岡教学を次世代に伝える活動に従事。主な著書に、『「格言聯壁」を読む』(2018致知出版)『「資治通鑑」の名言に学ぶ』(2018致知出版)『山鹿素行「中朝事実」を読む』(2015致知出版)『安岡正篤教学一日一言』(2013致知出版)など多数。  (文責・国基研)

2019.05.17