細川昌彦・中部大学特任教授は、10月11日、定例の企画委員会におけるゲストスピーカーとして来所し、今月7日にワシントンで正式に署名された日米貿易協定について語り、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。
概略下記のとおり。
○日米貿易交渉における日米の交渉目標の違い
・米側:米大統領選挙で成果を示したい
狙いは中西部のコーンベルトで、米国がTPPから離脱したことからの失地回復
・日側:米国の関税という“脅し”を回避したい
農産物譲歩はTPP水準に抑えること、自動車は制裁関税と数量制限の回避
○1年前の交渉開始時における土俵の設定
・米側:貿易赤字の削減
・日側:自由で公正なルールに基づく貿易
○今回の交渉成果
・農産物:TPP水準は交渉カードではないし、今後切る札はない
・自動車:制裁関税と数量制限の回避は一定程度評価できるが期限の設定なし
・WTOルールに反する合意は、WTO体制を弱体化させることになる
・今回の共同声明に、「自由」という文言が脱落し、自由貿易の旗を降ろした印象
○今後の対応
次回、WTO体制の立て直しを含めルールに基づく交渉を期待
細川教授は、1955年生まれ。1977年東京大学法学部卒、同年通商産業省入省、貿易管理部長、中部経済産業局長などを歴任。ハーバード大学ビジネススクールAMP修了(2002年)。2006年経済産業省退職後現職。著書に『メガ・リージョンの攻防』(東洋経済新報社)、『暴走トランプと独裁の習近平にどう立ち向かうか』(光文社新書)がある。
(文責・国基研)