矢板明夫・産経新聞外信部次長は、11月1日、国家基本問題研究所の企画委員会にて、先日閉幕した中国4中総会を受けて、中国政治を概観し、櫻井理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。
10月28日から31日の間、北京市京西賓館で、中国共産党の第19期中央委員会第4回総会(4中総会)が開かれた。集まったのは、全国の中央委員201人とその候補169人で、約20か月振りという異例の遅さでの開催となった。
総会はいくつかのコミュニケを発して閉幕となった。その骨子は、中国の特色ある社会主義制度の堅持と改善など、従来の主張を踏襲しているが、特に台湾同胞と連帯して台湾独立に反対する姿勢が強調されている点が目立った。
台湾問題が特に取りあげられたのは、香港デモを長期に解決できないことが、台湾にも飛び火することを恐れている証拠であり、このタイミングで米国は台湾に介入するなという中国からの強いメッセージになっているという。
さて、共産党の主張を定点観察するときに、重要な視点は、新しい言葉を探すのではなく、消えた言葉、少なくなった言葉を探すことだ。なぜなら、共産党大会というのは、権力闘争の場であり、様々な派閥の領袖が鎬を削り、対抗馬の主張を退ける傾向にあるからだ。
今回の特徴は、「中国製造2025」と「一帯一路」が姿を消したことにある。少なくなった言葉としては「反腐敗」と「中国の夢」だ。いずれも、習近平指導部が率先してきた重要政策のスローガンであり、習近平氏の求心力の低下が表れてきたと考えられる。
後継人事の予測は困難だが、噂として習近平氏の側近である陳敏爾・重慶市党委書記と、胡錦涛氏の弟子である胡春華・広東省党委書記などの名前があがっている。
中国経済の成長率は、2019年の1四半期6.4%、2四半期6.2%、先日公表された3四半期6.0%というが、あまりにも奇麗すぎる数字が連続しており、まったく信用できないが、減少していることは確かだろう。
ここにきて、習近平主席が10月24日の政治局会議で、ブロックチェーンをもとにした暗号通貨などのサービスを経済社会に導入する発言があり、経済へのテコ入れを重視する様子がうかがえる。
最近の中国の動向で気になるのが、北海道大学教授の拘束である。中国社会科学院の招聘で訪中していた教授が10月13日、公安当局に拘束された。にもかかわらず、我が国政府は、習近平主席を国賓として招待しようとしている。米国では、国際宇宙会議(IAC)に中国代表団の入国を拒否し、ベルギーでは、孔子学院の校長をスパイ容疑で入国拒否をしている。したがって、我が国は国際社会と歩調を合わせ、習近平氏の国賓招待は再考すべきではないかと訴えた。(文責 国基研)