2月14日、国家基本問題研究所企画委員会は、台湾の防衛研究所に相当する国防安全研究院の林彦宏博士を招き台湾情勢などについて意見を交換した。
林氏は3年前に、日台交流事業の一環で台湾側の一員として来所し、それ以来お互い交流を重ねてきた。台湾では先月、香港で反中デモが継続する中、蔡英文氏が総統選で再選を果たし、大陸では新型コロナウイルスが蔓延し、世界に経済的影響が出始める中、これからの米台関係、日台関係の展望について語った。
●総統選と立法委員選挙
1月11日、中華民国総統選が実施された。結果は57.1%の得票率で民進党の蔡英文氏が再選を果たした。他方、立法委員(日本の国会議員に相当)選挙では、民進党が7議席減らしたが、国民党は3議席増やし、新党の民衆党は5議席を獲得した。このように、台湾市民は、台湾の顔として蔡英文氏を圧倒的に支持したが、民進党の政策への不満が立法委員選挙に影響した。
さらに、蔡英文総統がBBCのインタビューで「独立主権国家だと宣言する必要はない」「すでに独立主権国家で」「中華民国、台湾」だと答えた。この中途半端な表現に対し台湾独立派は依然として不満がある。予想される不測の事態に備えるには、能力を養うことが重要で、台湾の国防力を強化すべきである。今後の蔡英文政権の舵取りが注目される。
●米台関係
2月7日、頼清徳副総統が訪米し、大統領以下3000人規模の朝食会に参加した。これは1979年の米台断交以来の大掛かりなもの。また、米国は最新鋭のM1A2エイブラムス戦車や携帯型地対空スティンガーミサイル、F-16戦闘機などを売却するとした。いま、米台関係は良好で、台湾の国防力強化には追い風である。
●日台関係
1月20日、安倍首相は、施政方針演説で、東京五輪・パラリンピックに関して、ホストタウン紹介の中で、「岩手県野田村は台湾」と述べ、台湾に対し大きな配慮を示した。日台関係は、さらに発展することが期待される。一方、日台間の軍事的交流は進んでおらず、領海とADIZが互いに接しているのに軍事演習さえ実施できない今の状況は、改善されなければならない。
●新型コロナウイルスに関連して
2月3日、武漢に残留していた台湾人の一部が、中国が用意した民間機で台湾に向かったが、日米などと異なり、台湾のチャーター便は受け入れなかった。他方、国内では中国渡航歴のある台湾人の14日間の在宅検疫を課すなど、厳しい対応をとっている。これに比較すると、日本政府の対応は、緩いのではないかと感じる。
【略歴】
1977年、台湾生まれ。淡江大学卒業。2005年より早稲田大学政治学研究科に交換留学。2012年、同大学公共経営研究科博士課程修了。2014年~2016年、岡山大学グローバル・パートナーズ職員兼講師。中正大学戦略及国際事務研究所准教授を経て、現在、国防安全研究院と台湾安全保障協会で活動中。岡山大学にて博士を取得した知日派。(文責 国基研)