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2020.08.28 (金) 印刷する

「新たな情報通信技術の挑戦 ―ネットワークオープン化とオール光ネットワークへ―」 柳瀬唯夫・NTT取締役副社長

 柳瀬唯夫NTT取締役副社長は、8月28日、国基研企画委員会にゲストスピーカーとして来所、NTTが取り組んでいるネットワークオープン化と光ネットワーク技術など、情報通信技術の将来像について語り、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見交換をした。

【概要】
 まず、ネットワークのオープン化の取り組みについて説明。
 従来のネットワークでは基地局(携帯電話無線局など)に使われる無線装置や制御装置は、少数のベンダー(ファーウェー、ノキア、エリクソンなど)による寡占市場であった。これでは、ネットワーク市場に製品を提供するベンダーの新規参入は困難であり、ユーザーとしても、選択肢が限られることは好ましくない。
 そこで、ネットワーク内をオープン化し、ハード面、ソフト面とも複数ベンダーが参入できる機会を増やすとともに、異なるベンダー製品間でソフト面及びハード面での接続を可能とすることが必要で、その取り組みはすでに始まっている。
 例えば、O-RANアライアンス(NTTドコモ、AT&T、Verizon、Orange、Intel、Nokiaなど)というグループがインターフェースの標準化に取り組み、本年中には完了する予定である。
 次の取り組みは、オール光ネットワークによりインターネットの限界を超えようというもの。インターネット内の情報通信量は20年前に比較し、190倍に増加し、データ量は90倍、消費電力は12倍となり、他方、半導体の微細化による性能向上には限界があり、じきに物理的なインターネットの限界がくるとも言われている。
 そこで、例えば現在の電子プロセッサを光プロセッサとすることで、大容量高速化を図ることが可能。加えて、中継網は光回線なので電子から光への変換の手間が省けるという利点もある。これは、IOWN(Innovative Optical Wireless Network)構想と称し、伝送容量は今の125倍、電力効率も100倍を目指している。ちなみに5Gや6Gはユーザーレベルでの技術革新の話で、末端に過ぎない。
 最後に、米国務省が自由を愛する国と企業に呼び掛ける“The Clean Network”プログラムに企業名があがっていることを紹介した。たとえ一私企業であっても、個人のプライバシーを侵害し、自由なアクセスを阻害する いかなる活動にも賛成しないと強調した。

【ゲスト略歴】
 1961年生まれ、静岡県出身。1984年、東大法学部卒、旧通産省入省、米国イェール大学大学院国際開発経済学科修了(MA)。2004年、資源エネルギー庁原子力政策課長、2008年、総理秘書官(麻生政権)、2012年、総理秘書官(第2次安倍政権)、2015年、経済産業政策局長、2018年に退官、東芝クライアントソリューション非常勤取締役、国際協力銀行日米豪連携担当アドバイザーを経て、2020年6月から現職。
(文責 国基研)