公益財団法人 国家基本問題研究所
https://jinf.jp/

最近の活動

  • HOME
  • ニュース
  • 「ポストコロナの世界秩序と米大統領選~日本の対応はいかに~」 簑原俊洋・神戸大学教授
2020.08.21 (金) 印刷する

「ポストコロナの世界秩序と米大統領選~日本の対応はいかに~」 簑原俊洋・神戸大学教授

簑原俊洋・神戸大学大学院法学研究科教授は、8月21日、国基研企画委員会にゲストスピーカーとして来所した。

簑原教授は、ポストコロナの時代における世界秩序と現在行われているアメリカ大統領選挙を中心に、今後の日本の対応などについて語り、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見交換をした。

教授はポストコロナの世界における新たな現実を、主に中国と米国、それぞれの視点から比較した。

たとえば、中国の視点に立てば、大国になれば当然、従来の大国たちがこれまでしてきたように、国際規範を形成する権利を主張できると考えるだろう。それが、習近平国家主席の独裁体制を助長し、対外示威行為として南シナ海、香港、尖閣、台湾、中印国境での事案という形で表出している。

国際政治学のテクトニクス(力学)から見ると、覇権挑戦型の台頭ということになる。具体的には、通商覇権、技術覇権、地政学的覇権を求めることから、結果として国際秩序に混乱をもたらすのである。

一方、米国の視点では、歴史的に国家のDNAとして、他の追随は許さない。ゆえに中国とはデカップリングの道を探るのだが、肝心の西側リーダーとしての意識は希薄で、同盟国にもデジタル課税をかけ国内産業を保護するなど、内向き傾向が続き、大国としての自信が揺らいでいる。加えて、コロナ禍と人種問題が痛手となり、国力の衰退を招いている。

さて、大統領選挙の行方だが、世論調査ではバイデン氏の有利が報じられているが、逆転の可能性はある。加えて、大統領選挙後の議会運営の観点から連邦議会選挙の行方にも注意を向けておくことも忘れてはならない。

では、日本にとって好ましいのはトランプ氏かバイデン氏かということだが、短期的には未知数のバイデン氏よりトランプ氏が続投する方が、安定的な外交を展開できるという利点はある。中長期は見通しづらい。日本は大統領選挙後に、いずれの候補に決まっても対応できるように、準備を進めておく必要がある。

西側陣営の中、日本の産業界は中国依存体質を脱却できず、チャイナリスクに対する意識が薄いため、陣営の足並みを乱す恐れがある。今後は、西側陣営の中心として価値観(自由、民主主義、人権、法の支配など)を立てた対中外交を展開することが期待される。

最後に、現行憲法のままで、仮に周辺国に異変があったら即応できるのか、大いに疑問があると警鐘を鳴らした。

【略歴】
1971年生まれ、カリフォルニア州出身の日系アメリカ人。専門は日米関係・国際政治・安全保障。カリフォルニア大学デイヴィス校を卒業後、1998年に神戸大学大学院法学研究科より博士(政治学)、日本学術振興会特別研究員、神戸大学法学部助教授を経て、2007年より現職。2019年よりインド太平洋問題研究所(RIIPA)理事長。

著書『アメリカの排日運動と日米関係―「拝日移民法」はなぜ成立したか』(朝日新聞出版、2016年)が第6回日本研究奨励賞を受賞。他に『「戦争」で読む日米関係100年―日露戦争から対テロ戦争まで』(朝日新聞出版、2012年)など多数。

(文責 国基研)