国基研理事で東海大学海洋学部の山田吉彦教授は、尖閣諸島周辺海域で実施した海洋調査について、その緊張高まる実態を定例の企画委員会で報告し、櫻井理事長をはじめ企画委員らと意見交換をした。
【概要】
山田教授は、昨年から構想してきた尖閣諸島周辺海域での海洋調査を、先月末に実施したことを動画とともに報告。調査は、尖閣諸島のある石垣市が東海大学に委託し実現した。調査船は、東海大学の海洋調査研修船「望星丸」で、昨年暮れには沖ノ鳥島周辺海域の研究調査(東京都と連携)にも利用されている。
1月30日、石垣市長らを乗せた調査船は石垣島を出港、31日午前、尖閣諸島周辺海域で調査を実施した。その内容は行政機関が自身の管轄権を行使し、水質を調べるための海水採取、あるいはゴミの漂着状況を目視で確認するなどである。
今回の調査で大事な点は、尖閣諸島周辺で調査を実施したという事実である。約10年振りの調査で分かったのは、以前と比べ尖閣諸島周辺も生態系が変化している可能性があるということである。
中国との間で摩擦がある海域であり、当然、中国海警船が圧力をかけてくることは想定内であった。関係者は事前に、海保・海自と打ち合わせをして臨み、当日は中国海警船が調査船に近付けないよう海保巡視船艇が張り付いてくれた。海自は外側から支援するという体制で臨んでくれた。このような連携は大変ありがたいことであったという。
教授は、海洋環境の保護は国際問題でもあり、これからは、尖閣諸島周辺の生態系や海洋環境保護のため、国際連携も考慮する必要がある。そして調査を継続していくことが何より重要だと強調した。
【略歴】
千葉県出身。学習院大学経済学部を卒業、埼玉大学経済科学研究科博士課程を修了。現在、東海大学海洋学部教授で同大学静岡キャンパス長(学長補佐)兼沖縄地域研究センター所長。専門は、海洋政策、海洋安全保障、海賊問題、国境問題など幅広く、海洋に関する知見豊かな海洋問題の第1人者。著書は『日本の海が盗まれる』(2019年、文春新書)『完全図解 海から見た世界経済』(2016年、ダイヤモンド社)など多数。
(文責 国基研)
第73回 尖閣諸島周辺海域で海洋調査
山田理事と櫻井理事長の対談。山田さんは尖閣諸島周辺海域で海洋調査を実施。海保・海自は中国海警船から調査船をしっかり守った。この調査は尖閣を守る重要な一歩になった。今後も継続していきたい。
櫻井よしこ 国基研理事長
山田吉彦 国基研理事・東海大学教授