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2022.12.23 (金) 印刷する

『夫婦同氏制を守るために』 髙池勝彦・辯護士・国基研副理事長

国基研副理事長で辯護士の髙池勝彦氏は12月23日、国家基本問題研究所企画委員会で夫婦同氏制を守るには何が必要かについて語り、その後櫻井理事長をはじめ他の企画委員らと意見交換した。

民法750条は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」と規定し、婚姻時には夫婦が称する氏を届けるよう戸籍法74条が規定する。この制度がわが国の夫婦同氏制或いは夫婦同姓制である。これに対し、夫婦が婚姻の際、別姓、同姓を選択できる選択的夫婦別氏制の導入が議論されている。

顕著な裁判事例として例えば、平成27年の最高裁大法廷判決と、令和3年の同判決が有名である。両事例とも夫婦同氏制を憲法違反とは認めなかった。これで法的に決着がついたかのように見えるが、根が深い問題を孕んでおり、これを放置すればいずれ別姓になるのではないかと危惧する。

なぜか。日本の民法は明治以来ほとんど変わらずに来たが、親族の部分は戦後占領軍の政策で大きく変えられた。この政策は日本を弱体化するために家制度を破壊することを目的とした。夫婦別姓を唱える論者は、夫婦同氏制を家制度の名残であり徹底的に破壊すべきだと論陣を張るのである。

加えて、司法の場にも揺らぎが起きる。

民法は離婚によって婚姻前の氏に復すとあるが、婚姻時の氏のままとしたい者もいる。その者は家裁の許可を得て改姓を届け出る必要がある。これに異議を申し立てた事例が山﨑道子事件である。家裁に姓の変更を求めたが、議員活動の場でも通称を使用できることから却下された。簡単には許可されない厳しい制度であった。これを契機に、民法767条2項が改正され、結婚後の姓を称することができるようになった(婚前氏続称)。

昭和34年の東京家裁の審判事例では、判決の中で選択の余地のない夫婦同氏制は根本的に再考されなければならないとも判示されている。

民法学者、裁判官、法務省の動きも看過できない。

平成7年に法務省がまとめた婚姻制度等の見直し審議に関する報告では、選択的夫婦別氏制を導入すべきとする意見が大半を占めると記述された。さらに、平成27年の最高裁判決で反対意見を述べた裁判官が、いずれ違憲になると新聞紙上で公言するなど、法学者の大半は違憲説を唱える。

このような動きを放置しておくと違憲の流れが定着するのではないかと危惧する。そこで婚姻前の旧姓の通称使用を法定化することで、選択的夫婦別氏を回避できると考える。国の根幹は家庭が支えていることを念頭に、外国に右に倣えで拙速な結論を導いてはならない。

【略歴】
昭和17年生まれ。昭和41年早稲田大学法学部卒、同43年修士課程修了、同47年司法試験合格、同55年スタンフォード大学ロースクール卒。新しい歴史教科書をつくる会会長、國語問題協議會会員、「昭和の日ネットワーク」副理事長、「明治の日推進協議会」事務総長などを務める。
主な著書は、『反日勢力との法廷闘争』(単著、2018年、展転社)、『不動産媒介の裁判例』(共著、1999年、有斐閣)、『不動産媒介契約の法律相談』(共著、1990年、有斐閣)

(文責 国基研)