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2023.04.17 (月) 印刷する

「惨憺たる日本の国土保全の実態」 宮本雅史・産経新聞編集委員

宮本雅史・産経新聞編集委員は、4月14日、ゲストスピーカーとして講話し、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見交換をした。

【概要】
最近の土地問題の状況について概観する。かつては観光地や水源地が外国資本(主に中国資本や中国系資本)に買われることは単発の現象であったが、最近は点と点が線で結びつき始めてきた。

・東北地方の実態
日本地図を東北から首都圏までをなぞると、まず、青森県では三沢基地の道路を挟んだ隣接地が買われている。岩手県では安比高原の広大な土地にインターナショナルスクールが建設された。宮城県では仙台空港近くの土地が買われ、そこに複数の中古タイヤ専門店が。火災が起きれば仙台空港は使用不能となる恐れがあるという。仙台市の自衛隊基地の付近では大きな物流センター建設の計画が進められ、福島県では中国の大手電力会社による太陽光発電事業が展開され、埼玉県加須市でも物流センターの計画がある。

仙台市には自衛隊の関連施設が陸自仙台駐屯地のほか、陸自多賀城駐屯地と霞目飛行場があり、物流センターの建設予定地から仙台駐屯地までは約2.9キロ、多賀城駐屯地までは直線で約5キロ。物流センターを中心にトライアングルの距離にあり、仙台市役所―仙台駐屯地―物流センター―仙台港が一直線でつながる。安比高原のインターナショナルスクールと仙台、加須両市の物流センター建設計画は、同じ中国系企業集団が関与している。

航空自衛隊松島基地から4キロほど離れた東松島の石巻港インター近くには別の中国系資本の姿がある。

・点を結ぶと線に
仙台は、青森から東京までを繋ぐ国道4号線のちょうど中間点。東北の中心地点で港もあり、物流のチョークポイントだ。加えて有事の際の自衛隊フォースプロバイダー拠点になっている点も注意を要する。仙台港に繋がる石巻港は東北では最大の港で機能性が高い。

一方、加須は関東のゲートウェイとして重要なポイントである。

東北地方では列挙したケース以外にも中国資本、中国系資本の進出が顕著で、「中国資本」「中国系資本」で括ると、青森から首都圏までの国道4号線沿いの点と点が1本の線でつながってしまう。

その他、九州北部の真ん中、福岡県小郡市に巨大な物流センターが計画されている。九州全域をほぼ網羅できるが、近くに国防上の情報ステーションがあることはあまり知られていない。

物流と国防の両にらみの実態、点と点が線で結びつく実態が浮かび上がる。それは東北のケースだけではなく、全国各地でみられる傾向だ。

・外国人による土地取得は規制できるか
外国人による土地の権利享有を制限するための「外国人土地法」がある。これは大正時代の法律で、相互主義を前提としているが、大東亜戦争後に同法施行令が廃止された後は、有名無実化した。

2021年、「土地取引規制」新法ができた。重要施設周辺の土地を「特別注視区域」と定め、土地所有者を調査することが可能となったが、有害行為が確認されなければ規制できないのが実情だ。一方、「外国人土地法」が現行憲法下でも法的効力を有していることは、国会答弁で確認されており(平成25年7月2日)、改めて検討されるべきという意見もある。

・洋上風力で日本列島は丸裸に
内陸の土地の他に、注意を要するのは、洋上風力発電の問題である。経産省、国交省が主導する計画では、再エネ海域利用法に基づき、入札が行われる。その際、公募事業者に海底の資料がすべて開示される。手を挙げただけで、その周辺海域の潮の流れや風、海底の地形や地質、海流など自然環境のデータが垂れ流し状態で手に入れることが出来るのだ。しかも、選定されるとその事業者は区域占用許可を得、最大30年間にわたってその海域を占有できるため、独自に海底調査等を続けることができる。日本列島は合法的に丸裸にされる仕組みになっている。

・拱手傍観するうち日本が日本でなくなる
2018年(平成30年)中国の李克強首相(当時)が来日した際、北海道を視察。日本政府は大歓迎した。日本政府が中国の北海道進出にお墨付きを与えたような形になり、その勢いは留まるところを知らない。我々日本人は、中国企業を民間企業と公営企業に分けて考えがちだが、親会社は『株式会社中国共産党』『株式会社習近平商店』であることを肝に銘じ、国土安全保障のため迅速に政治が動かなければならない。

【略歴】
1953年、和歌山県生まれ。慶応義塾大学法学部卒業後、産経新聞社入社。1990年、ハーバード大学国際問題研究所に訪問研究院として留学。1993年、ゼネコン汚職事件のスクープで日本新聞協会賞を受賞。バンコク支局長、那覇支局長などを歴任。
主な著書に『爆買いされる日本の領土』(角川新書)、『領土消失』(共著、角川新書)、『報道されない沖縄』(角川学芸出版)など多数。
(文責 国基研)