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2024.09.20 (金) 印刷する

総合安全保障プロジェクト『最近の中国核戦力整備の動向』中川真紀 国基研研究員

総合安全保障プロジェクトの月次報告。中国の軍事動向を分析する中川真紀研究員が、最近の中国核戦力整備の動向をブリーフィングしました。早朝からの開催でしたが、国会議員をはじめ企画委員など多くの参加者がありました。

この総合安全保障プロジェクトの成果は、逐次、国基研チャンネルやホームページ上でも展開します。

【概要】
●中国の核戦略と核戦力
中国の核戦略は、2019年の中国国防白書によれば、「自衛防御核戦略」と表現される。すなわち、他国の核使用及び核による威嚇の抑止を目的とし、①核兵器の先制不使用、②非核国・地域に対して無条件での核使用・威嚇はしない、③核戦力は国家安全に必要な最低水準を維持する、という核政策をとる。いかにも、守勢的な戦略だが、果たしてそうなのか。

日米同盟のもと米の核を対中威嚇に使用すると中国が判断したら、日本は核保有国と同列となると、中国国防部報道官は記者会見で言外に仄めかしており核政策②の条件における非核国ではなくなる。さらに、③の米の核弾頭保有数に比し、必要な最低水準には程遠いとして500発の核弾頭をさらに増勢している。

次に中国の核戦力を見てみる。1967年に初の核実験を行ってから着実に核兵器開発を進めている。近年の開発状況から、当初の核戦略、「最小限抑止(相手に一定程度の損害を与える)」から、「相互確証破壊(第1撃後に残存核戦力で確実に報復)」への転換を企図している模様である。

●中国核戦力の整備状況
さて、中国の核戦力の整備状況を細かく見ていく。核戦力の3本柱(陸・海・空)のうち、地上配備ミサイル(弾頭数346発)を主力とし、隠密性の高い潜水艦発射弾道ミサイルSLBM(弾頭数72発)が補完する。爆撃機(弾頭数20発)はいまだ開発途上という状況である。

地上配備ミサイルにおいては、大陸間弾道ミサイル(ICBM)旅団は16個旅団あるが、そのうちサイロ式液体燃料ICBMの運用は4個旅団、車載式固体燃料ICBMの運用は12個旅団である。衛星写真などにより確認すると、長射程のDF-5のICBMサイロは運用中のものは掩蔽されており、更に建設中のサイロも多数確認される。また、DF-31という車載式固体燃料ICBM基地の新増設も確認。加えて固体燃料ICBMのサイロ群も建設中であり、LOW(警報即発射)態勢の確立を企図しているとみられる。

他方、DF-26(グアムキラー)などの中距離弾道ミサイルIRBM、DF-21A/E(対日指向)などの準中距離弾道ミサイルMRBMの各基地も各地に展開され、さらに核搭載原子力潜水艦SSBNが海南島の亜龍基地に確認される。いずれも整備、ミサイル搭載等は地下施設で行われており、厳重に秘匿されている状況が確認される。

今後も中国の活動は継続して注視していく必要がある。(文責 国基研)

資料PDF 最近の中国の核戦力整備の動向