10月25日、経済問題に詳しい田村秀男・産経新聞特別記者が、安値輸出と生産過剰を続ける中国の経済動向を解説した。
【概要】
〇行き詰まった共産党主導経済
ほぼ1年前から中国の金融不安の実態が報道されるようになった。金融「爆雷」の頻発である。中植集団グループのようなノンバンクが、バブル崩壊のために不動産関連融資を回収出来ず、投資者の元金と金利の支払いを一方的に停止したままになっている。
それでも中国公安当局は、抗議する投資家や市民を監視し、時には拘束して、抑え込んできた。金融監視当局はノンバンクのみならず金融機関全体の不良債権に関する情報を隠蔽し、操作している。西側の企業は不透明極まる中国市場への投資を大幅に減らしている。
中央政府や中国人民銀行による不動産市場テコ入れ策は小出しのため効果は薄く、不動産バブル崩壊の進行を止められない。貧富の格差が広がり、企業家などの富裕層は国外に脱出できるが、中間層に不満が溜まる。そこで党中央は市民の抗議封殺に躍起となっている。
〇中国経済の現状
中国のGDPは、公式発表では前年比4%超の成長だが、その分野別増減率を見ると、固定資産投資が激減し、家計消費も低迷しており、実際の成長率は0%以下になる可能性が高い。実際、住宅相場動向を見ても、潜在需要が高いと言われる上海や北京でさえ、ことしは暴落状況が続いている。
中国財政省は10月12日に大型財政出動の用意があると表明したが、25日時点でも具体化させていない。口先だけにとどまりそうだ。背景には、外貨に依存する中国特有の金融構造がある。2008年9月のリーマンショック時には豊富な外貨資産のもと、中国人民銀行による巨額の資金発行が可能だった。2012年秋に習近平党総書記が就任するが、15年以降、外貨資産が伸びなくなった。この結果、人民銀行による資金増発を伴う国債発行は大きな制約を受けたままになっている。従って、バブル崩壊不況になっても大型財政出動に踏み切れないという悪循環に陥っている。
〇安値攻勢は習政権へのブーメラン
中国は西側企業に中国企業との合弁企業を設立させて設備と製造ノウハウを提供させ、技術を吸収したら突き放す。技術をモノにした中国企業が安値で輸出攻勢をかけ、日米欧企業を圧倒するという仕組みを作り成長してきた。しかし、ここにきて中国から引き揚げる外国企業が続出している。海外企業の新規対中直接投資はゼロで、海外の投資家による証券投資も激減している。
中国製電気自動車(EV)の販売世界シェアは約7割で輸出台数は右肩上がりだが、単価は下がる一方。レアアース、レアメタル、太陽光パネルも同じく値下がりが激しく、外貨獲得力は弱くなっている。
こうして、習党総書記肝いりの「新質生産力」(イノベーションを主体とした高技術、高効率、高品質な生産形態)の増強は世界経済をかく乱するばかりでなく、中国経済の成長に必ずしも結びついてはいない。
わが国も対中投資は百害あって一利なし、ということを国内各企業に対し明確に示して警鐘を鳴らさなければならない。(文責 国基研)