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2008.03.14 (金) 印刷する

総統選挙と台湾の行方について、日米台三政策研究所の意見交換

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李登輝前総統御夫妻と台北の御自宅で

---------- 台湾レポート ----------

JINF役員ら、台北で国際会議に参加

去る2月23日から25日にかけて、櫻井よしこ理事長、田久保忠衛副理事長、潮匡人評議員が台北を訪問。24日に、当研究所と米国および台湾の有力シンクタンクとの共同主催による「台湾総統選と日米台関係」に関する国際会議へ参加した。

会議には米国から、ブッシュ政権でアーミテージ国務副長官を支えた次官補代理(東アジア・太平洋担当)を務め、現在もアーミテージ・インターナショナルのパートナーであるランディー・シュライバー氏。同じく第1次ブッシュ政権での国防総省国際安全保障局上級部長(中国・台湾・モンゴル担当)を務め、現在はAEI研究員のダン・ブルメンソール氏らが参加した。

台湾側からは、日本で代表部(大使館)勤務の経験を持ち、現在、国家安全会議諮詢委員(閣僚級)の林成蔚氏。民進党国際事務部首席副主任の頼怡忠氏。台湾智庫(台湾シンクタンク)国際事務部副主任の宋允文氏。中央研究院欧美研究所研究員の林正義氏らが参加した。

米台側の事情で非公開となったため、中身を詳しく公表できないが、「馬候補が当選すれば、3~4年以内に中国が台湾を取る」「北京オリンピック後にどうなるか、誰も予測できない」「米政権はレイムダックで危険なサイクルに陥る」「米台関係は十分でない。日本も参加し、関係強化を図る必要がある」などの意見が出た。当研究所役員も、国民党政権誕生による政治的・軍事的リスクを指摘し、「価値観外交」の意義を述べた(会議は英語)。

国民党No2と意見交換

加えて現地では、国民党の江丙坤副主席とも意見交換した。江氏はかつて東大で博士号を取得。流暢な日本語で「日本は第二の故郷」などと語った。経済大臣や立法院副院長(国会副議長)を歴任した有力政治家で国民党政権誕生なら行政院長(首相)就任が有力視されている。日台関係のキーパーソンとなることは間違いない。

江副主席の発言要旨はオフレコ部分を除き、以下のとおり。

中華民国は1912年に独立している。国民党の政策は現状維持であり、国民世論も85%が現状維持を望んでいる。平和と安定が重要である。中台関係が緊張すると、外資が逃げる。株も下がる。消費も投資も伸びない。我々の政策は「①独立しない、②統一しない、③武力行使しない」。政府はトラブルメーカーだが、我々はピースメーカーである。戦争にならないことが一番大事だ。人民の豊かな生活、民主政治が国民党の主な価値観である。早急な統一に賛成する人は一人もいない。中共は民主政治でない。共産主義とは価値観が違う。我々が価値を共有できるのは民主国家だけだ。我々が中国を変化させる。中華民国は建国97年目となる。今の憲法で陳政権も誕生した。「台湾」名での独立は、名を変えて実を捨てる結果になる。いずれ中国に民主化の波が来る。変化を待つべきだ。代価がなければ独立など簡単だ。だが、国名を変えたために、生命・財産を失うのは引き合わない。

当研究所役員は、国民党の「現状維持」政策がもたらすリスクを指摘し、加えて台湾の防衛努力に対する疑問も提起したが、副主席が経済畑の政治家であったこともあり、この点での満足な回答は得られなかった。

李登輝前総統御夫妻と意見交換

現地では、李登輝前総統とも親しく意見交換した。李前総統は格調高い日本語で以下のとおり語った(要旨)。

中国はいずれ台湾をアメリカと共同管理しようとするだろう。民進党政権は汚職を重ね、何一つ仕事をしてこなかった。8年間に7人の首相、6人の経済部長が交代し、高官が12人も起訴された。立法院選挙で負けたのは当然だ。台湾の運命の成否を決める最大の要素は指導者の素質と能力である。陳はいきなり政権を取ったから、どう政治をすべきか分かっていない。(前夜、国防大臣更迭となった)今回の国防省スキャンダルの件もハッキリ言って汚職だ。彼らは人民の苦労が分かっていない。日本人もなぜ陳を批判しないのか。そればかりか、私に「民進党を支持しろ」と勝手な注文をつける。私は選挙戦のプレイヤーではないから、最後に態度表明する。政党の争いに飛び込むのは愚の骨頂だ。勝馬に乗るつもりはない。謝候補には「陳総統と一線を画せば、支持する」と言った。1週間後には、中国も選挙戦への態度を決めるだろう。

なお、当研究所役員は口を揃え、総統選の結果と、李前総統の態度表明がもたらす政治的影響の重大性を力説したところである。

実り多い、有意義な訪台

以上に加え、日本交流協会台北事務所の池田維代表とも会談。総統選の情勢分析に加え、新政権発足後の国際情勢について意見交換をした。池田代表は外務省中国課長、アジア局長を歴任した中国通であり、初の中国畑出身の「代表(大使)」である。いわゆる「チャイナスクール」ではあるが、分析は的確であり、有益な会談となった。

また、上記の林委員に加え、羅福全・亜東関係協会前会長、黄昭堂・台湾独立連盟主席ら日本通の現地有力者と会食。総統選や新政権発足後の日台関係を巡り、懇談した。

なお訪台の最中、台北では、両候補による初のTV討論会が行なわれ、ほぼ全局が中継していた。

以上のように、総統選最中での訪台であり、国民党、民進党、李登輝新党に加え、米国要人、現地有力者を含む様々な立場の相手と意見交換することができた。短い日程ではあったが、きわめて充実した有意義な訪台であった(櫻井よしこ「台湾は親中反日に傾くのか」、「週刊新潮」3月6日号掲載参照)。