日本の英字新聞の発行部数は、日本語の新聞と比べると、圧倒的に少ない。(国内最古のジャパン・タイムズに読売新聞発行のジャパン・ニューズ、週刊新聞の日経ウイークリーを合わせても5万部規模の市場(国内印刷の米英の新聞を除く)。だが、対外影響力は大きく、英字紙がどんな報道、編集をするかは、日本の対外イメージに直接はね返る。
日本の代表的英字紙といわれるジャパン・タイムズの4月22日付けの紙面は、安倍首相が靖国神社に奉納した真榊の写真を記事と共に一面で大きく掲載した。翌日も一面の写真は春季例大祭の靖国の写真を使っているが、その間邦字紙の靖国報道は気づかぬぐらいに小さい。22日だけを見てみると、オバマ米大統領の訪日関係の記事では安倍首相の危険なナショナリズム、そして戦時中のいわゆる慰安婦問題で、日本の軍が強制的に連行した、と当然のことのように書く。そして、その日の社説では「教育を逆戻りさせる安倍」と題して、教育改革法案が教育の中立性を破壊すると攻撃する。日教組支配の偏向については全く問題にせず、戦前への回帰だと憂慮する。隣のページでは、安倍首相が目指す“普通の国”は平和憲法、教育基本法を改正する危険な方向として批判する、ある元駐日大使の寄稿を載せている。
この日だけが特別ではない。同紙の報道、論説は、憲法改正、安全保障、歴史認識、靖国参拝、従軍慰安婦などで、中国、韓国よりもむしろ日本に批判的な欧米のリベラル派に近い。朝日新聞の英字紙ともいわれる。長年、日本に住むあるチベット人が言う。「この英字紙は、外国人の表面的な日本理解に基づく日本批判を増幅しており、“Anti-Japan Times”と言った方がよい」。
海外への対外発信力の強化が叫ばれるが、国内の“獅子身中の虫”を放置してはいけない。
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