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2015.03.16 (月) 印刷する

外務省幹部が口にする資格はない「韓国には疲れ切った」 島田洋一(福井県立大学教授)

 アメリカの東アジア専門家から興味深い発言がいくつも出だした。

(韓国の朴槿恵大統領は)北朝鮮の指導者とは前提条件なしにいつでも会うと言っているにもかかわらず、日本の指導者とは会おうとしない(キャンベル前米国務次官補)。

日本だけでなく、韓国の朴槿恵政権も自らの国益のため、今後数カ月間の言動を自制する必要がある(ローレス元国防副次官)。

安倍首相が、「政治的な前提条件なしに首脳会談を行うべき」、「問題があるからこそ首脳間での対話が必要」といった大人のメッセージを発してきたこと、保守派の政治家やメディア、民間有志が歴史問題で事実に踏み込んだ反論をしてきたこと等が、ようやく功を奏してきたと言えよう。韓国の幼児的対応を弁護することは、第三国の心ある人々にとって益々難しくなりつつある。

なおキャンベル氏は、「日本の指導者は『韓国には疲れ切った』と言っている。こうした状況が長期的にみて米国の損害になっている」とも述べている。米側の専門家としては、的確な観察であり指摘だろう。

しかし、日本の政府高官が、実際に「韓国には疲れ切った」と述懐しているとしたら問題だ。外務省はいまだに、慰安婦問題で「何度も謝罪しています。アジア女性基金で見舞金も提示してきました」といった逃げの反論しかしてしない。その分、民間有志は事実に踏み込んだ反論を行うのみならず、「強制連行や性奴隷化がないなら、なぜ日本政府は謝罪するのか」といった相手の逆攻撃に対しても反論せねばならない。外務省の骨のない敗北主義的対応のせいで、民間は2倍疲れる闘いを強いられているわけである。しかし、日本の名誉と将来世代の苦労を考えれば、歴史情報戦の舞台から降りるわけにはいかない。

外務省幹部に、「韓国には疲れ切った」などとうそぶく資格はない。まず、本当に疲れる戦いに自ら参加してから、「疲れ」を口にすべきだ。

【参考記事】

日韓関係悪化「米国に有害」 米国務次官補が苦言、「朴政権も言動自制が必要」

【ワシントン=加納宏幸】1期目のオバマ米政権で東アジア外交を担当したキャンベル前米国務次官補は13日、日韓関係の悪化について、「米国にとって有害であり、これを直さなければ(アジア重視の)リバランス政策はできない」と述べた。ワシントンで開かれた日韓関係に関するシンポジウムで語った。

キャンベル氏は、オバマ大統領が昨年3月の日米韓首脳会談を主導したことを評価しながらも、「十分ではなく、なすべきことはもっとある」として、3カ国の安全保障協力の推進などを促した。

韓国の指導者に対しては「北朝鮮の指導者とは前提条件なしにいつでも会うと言っている」にもかかわらず、日本の指導者とは会おうとしないと指摘。他方、「日本の指導者は『韓国には疲れ切った』と言っている」とし、こうした状況が長期的にみて米国の損害になっていると強調した。

一方、ブッシュ政権でアジア・太平洋を担当したローレス元国防副次官は戦後70年を機に中国が韓国との関係を強化しようとしているとした上で「日本だけでなく、韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権も自らの国益のため、今後数カ月間の言動を自制する必要がある」と述べた。
産経 2015.3.14