10月28日、米連邦捜査局(FBI)のコミー長官が、ヒラリー・クリントン氏の電子メール使用規則違反問題で新たな関係メール群が見つかったとして、7月に打ち切った捜査を再開すると表明した。
ヒラリー氏の最側近の一人、フーマ・アベディン氏と夫のアンソニー・ウィーナー元下院議員のパソコンに残っていたものだという。ウィーナー氏は、自らを被写体とする猥褻写真を不特定多数の女性(未成年者を含む)に送るなどの行為を繰り返していたとして、FBIの捜査を受けていた。
注目したいのは、同28日付のワシントン・ポスト紙の社説である。「民主的なプロセスに影響を与える可能性を考えると、このタイミングでの発表は残念(unfortunate)だ」とある。
では、10月7日に同紙が大々的に暴露したトランプ氏のセクハラ会話テープは何なのか。まさに「民主的なプロセスに影響を与える」狙いで、投票日1か月前というタイミングで出したものだろう。
批判を受けて、トランプ氏が、自分は口だけだが、ビル・クリントンは行為に及んでいる、どちらが悪質なのかと反論するや、今度はニューヨーク・タイムズ紙が、トランプ氏に実際、体を触られたという女性数名の証言を、これまた大々的に取り上げた。
その一方で、ポスト、タイムズ両紙は、大統領選が低次元の中傷合戦に堕しているのは嘆かわしいとする社説を繰り返し掲げている。低次元のネタを提供しているのは、一体誰なのか。まさに偽善の極み、典型的なマッチポンプという他ない。
高級紙を自任する2紙が、特に大統領選の年となると、いかに低レベルの党派的行動に走り得るか、アメリカ観察者にとって銘記すべき情景と言えよう。
なお、今回もNHK(他のテレビ局は知らない)は、ニューヨーク・タイムズ紙が社としてヒラリー支持を打ち出したことをニュースとして報じていた。同紙が共和党候補を支持したというなら、朝日新聞が安倍首相を支持したと同等の、驚くべき「ニュース」だが、未だにニューヨーク・タイムズ紙を「アメリカの良心」とでも捉えているのか、それとも同紙を権威としてNHK自身の進歩的姿勢をアピールしたいのか、いずれにせよ不見識と言う他ない。
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