防衛省が離島防衛などに巡航ミサイルを導入する方針に対して、早速野党は「専守防衛に違反する」として反対を唱えている。しかし、長射程巡航ミサイルを保有せずに、占領された島嶼を奪回しようとしたり、イージス艦の防護に当たったりするのは自衛隊員に「特攻作戦」を強いることに等しい。その同じ野党は2年前の安全保障関連法案の国会議論では、自衛隊活動拡大に伴う自衛隊員の安全確保の観点から反対した。矛盾してはいないか。
仮に中国が尖閣諸島を占領したとすれば、ただちに同島に最新の対空ミサイルを配備するであろう。この対空ミサイルは、本年4月にロシア国営兵器輸出企業ロスオボロンエクスポルト社の社長が、中国に引き渡しを開始したと公表したS-400だ。400キロ先の6つの目標を同時に攻撃できる能力を有しているという。
●巡航ミサイル反対で改めて証明
こうした中国の動きに、弾道ミサイル防衛にあたる日本のイージス艦も対応を迫られている。中国海軍が保有する駆逐艦の対艦ミサイルは最大射程が約120キロだが、対空ミサイルはS-400の艦載版であるロシア製3K96リドゥートが搭載される可能性が高いからだ。
いずれにせよ、航空自衛隊の現有空対地ミサイルで、これに対応するには、敵の地対空ミサイルの射程に入らなければ攻撃できない。すなわち、敢えて攻撃しようとすれば貴重な戦闘機と、何年もかけて育成したパイロットを失うことを覚悟せざるを得ない。
菅義偉官房長官が「安保法が成立していなかったことを想定するとゾッとする」としているのは実務者としての偽らざる本音であろう。それにしても当時「自衛隊員の安全確保のため」と称して安保法案に反対した野党の主張は単なる為にする偽善であることが、今回の巡航ミサイル反対で改めて証明された。