国家基本問題研究所の企画委員会におけるゲストスピーカーとして、大和総研主席研究員の内野逸勢氏と鈴木文彦氏の両名が来所し、地方創生と金融などについて櫻井よしこ理事長はじめ企画委員らと意見を交わした。
まず、内野氏が前回来所した折に触れた地方創生の考え方と政府の取り組みをもとに、特に人手不足と過疎の問題をいかに克服するか、そしていかに平均所得の向上をめざすかを説明。たとえば、地方の地域金融機関が、域内で資金を循環させる役割を担うこと、すなわち、責任感を持って地域を活性化させる課題を持ち、リスク覚悟で地域へのコミットを強める努力が必要だという。
次に具体的な方法論を鈴木氏が説明。人口を増やすのは街づくりではなく「しごと」であるということを事例で示した。例えば同じような規模の石巻市、大牟田市、大垣市を比較し、1985年から2015年にかけて前2都市が人口減、特に大牟田市の減少ペースが急なのに対し、大垣市は横ばいを維持。
石巻市は産業が農林漁業に偏在、大牟田市は三池炭鉱の企業城下町で、両者とも主産業の落ち込みと共に人口も減少した。一方、大垣市は東証1部上場企業が4社あり、専門技術職の増加とともに全体の人口も少子化の影響をあまり受けなかったとした。
鈴木氏は結論として、地方が取り組むべき「しごと」のターゲット分野は、農林漁業や観光業の振興および企業誘致だという。そして、「しごと」の質である労働生産性を高めるためには、地方企業の生業・家業という感覚から、これを事業とする発想の転換が必要だという。
つまり、ただ良いものを作って地元で売るだけでなく、売れるものを域外で売る努力をすること、一定の質、量、納期を担保する生産管理体制を作ることなどが求められ、そのためには、地方金融機関との連携などが重要になると強調した。
内野氏は、1990年大和総研に入社、大蔵省・財政金融研究所出向などを経て、現在金融調査部担当部長。鈴木氏は、地方銀行勤務を経て2008年大和総研に入社し現在金融調査部副部長。
(文責 国基研)