先日、都内の有名私立大学で講義を行った。約300名の聴衆学生の内、実に3分の1が外国人で、その大半が中国人であった。
日本の大学は、少子化の為、外国人留学生を入学させないと経営が成り立たないという。このため、米国ではスパイ活動の温床として警戒されて閉鎖が相次いでいる孔子学院に関しても、日本では中国人留学生を多く入れている関係上、閉鎖に踏み切れないでいる。
また、トランプ米政権は、中国当局による米企業のハイテク技術の窃盗を防ぐため、6月から中国人留学生と研究者らへのビザ発給を制限し始めたが、日本では野放し状態に近い。日本も再検討が必要ではなかろうか。
●認識薄い国家動員法の脅威
米シンクタンクの戦略予算評価センター(CSBA)は、本年3月公表した報告書で、中国は「孫子の兵法では敵国に対して多様なスパイを送り込むことを説いている」と指摘し、中国による留学生や研究者の送り込みに警戒感を示すとともに、教育・研究機関、特定個人に対する中国の財政支援についても問題視している。
中国は2010年に施行された国防動員法により、外国在住の中国人であっても、国家の緊急時には強制動員に応じる義務を負うようになった。例えば尖閣諸島の領有権をめぐって日中間で戦争になった場合、彼らが日本国内で後方かく乱に動く可能性もあるのだ。
一方、日本では少子化の観点から外国人の受け入れ拡大に向けた検討を進めており、菅義偉官房長官は、「外国人が住んでみて良かった、働きたいと思う国にすることが大切だと思う」などと述べている。
NHKでは今年4月に放送された番組で、学生の9割が中国からの留学生という宮崎県えびの市の某私立高校が紹介されていたが、学生は中国国歌の「義勇軍進行曲」を歌い、学校からお小遣いまで支給されているとのことであった。
●国籍は変わっても中国に忠誠
来日中国人の多くは長期に居住して日本国籍を取得する。新潟県佐渡の「道の駅」を1円で買い取り、新潟国際芸術学院を設立した東富有理事長もその一人で、2014年に中国の唐家璇元国務委員が佐渡を訪問した時は案内役を勤めた。
入国した中国人が子供を産んで日本国籍を取得し、その子女が防衛大学校に入校するケースもでてきた。ただ、彼らの忠誠心が日中どちらにあるかは不明で、日本の幹部自衛官となった場合の国防意識を心配する声もある。
筆者は「ろんだん」でも中国の工作活動として「3つのM」があると何度か書いてきたが、軍事力(Might)、経済力(Money)に加え、いまや心(Mind)まで日本は中国に侵食されつつある。安全保障上の危機が迫る中、中長期的に日本社会全体が内部からも蝕まれているように思えてならない。