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2020.03.02 (月) 印刷する

「新しい歴史教科書」不合格の真の狙い 皿木喜久(産経新聞客員論説委員)

 新聞などで既報のように、「新しい歴史教科書をつくる会」が推進する「新しい歴史教科書」(自由社)は、文部科学省の検定の結果、著者側の一切の反論を許さない形で「不合格」となった。
 かつて「つくる会」を厳しく批判してきた朝日新聞でさえ「過去に合格した教科書が不合格となるのは極めて異例」(2月22日付朝刊)と、首をかしげるほど驚きの結果だった。だがもっと驚くのは、405カ所にも上った「欠陥」の多くが、「生徒を誤解させる」などとして、ほとんど意味不明な、あるいは理解に苦しむ理由をつけられていたことだ。

 ●強引すぎる「欠陥」指定
 例えば第3章(近世)に付した「『古事記』をよみがえらせた本居宣長」という人物コラムである。日本の古語を漢字で表わした万葉仮名と漢文を交えて書いてある「古事記」が、江戸時代になるとほとんど読めなくなっていたという事実を指摘、宣長が35年間の血の出るような努力で解読した功績を取り上げた。今回の改訂版で初めて掲載したコラムである。
 ところが欠陥に指摘した事由は「生徒が誤解するおそれのある表現である」とするだけで、要領を得ない。そこで調査官との面談で理由を問いただすと「神主の中には(古事記を)読めた人もいたらしいですよ」という答えだった。だから「ほとんど読めなくなっていた」というのは間違いだというのである。
 愕然とした。どんな通説でもレアな例外を挙げ反論されることはある。しかしこの場合「どこの何という神主が読めた」という論拠も出典も示されていない。無茶苦茶な理屈でクレームをつけているのである。どうやら調査官らは、本居宣長や古事記を、この教科書から抹殺したい一心から、強引に「欠陥」に指定したとしか思えないのだ。

 ●歴史観見直しに露骨な敵対
 宣長は「古い日本語で書かれた古事記を読まなければ、古代の日本人の心はわからない」と思い、解読に取り組んできた。このことは著書「玉勝間」などからも明らかだ。だが唯物史観に彩られてきた日本の歴史学は、「古代の日本人の心」など無視してきた。調査官たちも「古事記をよみがえらせ、古代の心に触れる」ことなど、自分たちの歴史観に合わないことであり、それを教科書で取り上げることが気にくわなかったのだろう。
 このことは聖徳太子、坂本龍馬、西郷隆盛らの記述についたクレームにも共通することである。日本人に誇りを持たせる彼らを、日本史から葬りたいという、あくなき願望の表れである。「つくる会」などで進めてきた、歴史観見直し運動に敵対する動きが、露骨に息を吹き返してきたのである。