2月17日の今週の直言「新型コロナウイルスの感染予防策を提言する」で提起した「新型コロナウイルスの感染予防策」がなかなか実行に移されていないことを残念に思う。この間にクルーズ船内での感染が広がり、さらにスポーツジムや病院での感染が広がっている。私は、原発の安全性・信頼性を高める活動を推進している日本保全学会の会長を4年間務めた「保全学」の専門家として、予防保全の重要性をあらためて説明したい。
●人工ウイルスの可能性も
新型コロナウイルス(COVID-19)にはHIV (エイズウイルス)のタンパク質を作成する塩基(遺伝情報)が挿入されていることをインド工科大学の科学者たちが発見した(下図参照)。
HIVに感染すると体の免疫機構が崩壊する。つまり、一度陰性になった人でも、免疫力が落ちて再び陽性になる。この論文では、COVID-19とHIVとの「不可解な類似性」を科学的に検証して、人工ウイルスが世界中に拡散している可能性を指摘している。
インドの研究チームが指摘する、COVID-19ウイルスに見られる遺伝子の挿入箇所
一方、中国天津南開大学の阮吉壽教授の研究チームは、COVID-19の遺伝子地図(ゲノム)の塩基配列を分析した結果、SARS(重症急性呼吸器症候群)には存在しないが、HIVやエボラ出血熱のウイルスと同様の突然変異の遺伝子があることを発見した。研究チームは、COVID-19は、HIVやエボラと同様の方法で人体に侵入するので、SARSよりも100倍~1000倍も伝染力が強いことが分かったとしている。
さらに、米司法省は1月28日、ハーバード大学の化学生物学部長が米政府に隠して中国から研究費を得ていたとして逮捕されたことをホームページ上で明らかにした。
この教授は米国防総省などから軍事関連の研究で助成を受ける一方、武漢理工大学と中国政府からも巨額の研究資金を得ていた。
●オフィスや家庭で容易に侵入
さて、このような「生物兵器」の可能性を捨てきれない厄介なウイルスから、我が国は国民を守らなければならない。
コロナウイルスは、エンベロープという膜でできた殻のなかにRNAという遺伝子の紐を収納し、スパイクと呼ばれるトゲの先端を人間の細胞膜に押し当てて穴を開け、細胞内にRNAを注入して増殖する。このエンベロープは、アルコールや石鹸で溶かすことができ、さらに微酸性の次亜塩素酸水など塩素系の薬品で不活性化できる。
また、咳やくしゃみによる飛沫が乾くとスパイクが破壊される。飛沫は流体力学の常識からすれば、微細な霧状の水滴でもウイルスを多数含む「エアロゾル」となるため、ウイルスは締め切った室内では空気中に漂う。
これはスポーツジムやコンサートホール、病院の待合室や陰圧室でも同じだ。飛沫やエアロゾルは、ドアノブやスマホの表面、満員電車の吊革や床などにも付着する。米国疾病対策センター(CDC)では、これらの付着ウイルスは、2時間以上も生きていると警告している。
閉じられた室内での換気が感染防止に効果的だとしているが、窓の空かない最近の満員電車では、ウイルスが付着したスマホを耳に当てただけで目、鼻、口は至近距離になる。当然指先にも付着している。靴底も例外ではない。こうしてウイルスは、オフィスや家庭に容易に侵入してくる。
●効果的な次亜塩素酸水の噴霧
そこで、筆者は「今週の直言」に書いたとおり、次亜塩素酸水を噴霧する空調や加湿器の活用を予防保全として提案している。免疫作用が強固に働かないコロナウイルスから身を守るには、予防保全としてのウイルスの殺菌が効果的だ。
安倍晋三首相は全国の小中高校などに一斉休校を呼びかけたことで、児童・生徒たちの学校での感染リスクは下がる。しかし万一、家族で感染者が出た場合は、患者の寝ている部屋を隔離して換気し、次亜塩素酸水で殺菌する必要がある。病院の待合室や陰圧室もまたしかりだ。家庭単位で、たとえ感染者が出ても家族に蔓延しないように手洗いとうがい、次亜塩素酸水の噴霧による空気の殺菌が重要である。
COVID-19は潜伏期間が長いので、だれが患者か分らない。体温計測や咳などの体調変化を素早くとらえて、検査を受ける必要がある。
原発事故も過酷事故を抑え込むのが難しかったように、一度、患者が増えてしまうと事後保全としての治療は困難を極める。中国・武漢のようにならないためには、感染の拡大を極力防ぐことが成否の分かれ道である。
海外では、患者が多数発生した病院をスプレー消毒しているが、患者が多数発生する前の予防保全として次亜塩素酸水の空調などへの噴霧で殺菌を心掛けることが必要だ。タワーマンションも、各部屋が空調のダクトでつながっていると感染が広がりやすい。
なお、治療薬としては、インフルエンザウイルスの遺伝子複製を阻害する「アビガン」が有望視されている。すでに治験が開始されたが、インフルエンザ対策として国は200万人分を備蓄している。治験結果に期待したい。事後保全はまだ手探り状態である。