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2020.03.19 (木) 印刷する

「米大統領選挙 民主党候補の行方」 グレン・フクシマ氏

グレン・フクシマ・米国先端政策研究所上席研究員は3月19日、国家基本問題研究所企画委員会において、「米大統領選 民主党候補の行方」と題し、米国で行われている大統領選挙を分析し、田久保忠衛国基研副理事長をはじめ企画委員らと、意見交換をした。

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2016年の大統領選挙の時、クリントン候補に対し、アジア政策を助言したのは一例だが、今回の選挙でも、概ね民主党系の集会には顔を出し、ほとんどの候補と話をする機会があった。そのことから今回の大統領選挙、特に民主党候補の行方について、若干分析をしてみたい。この1か月で、米国の政治状況が大きく変化しつつある印象を持つ。

実際、1か月前までは現職のトランプ大統領が有利と思われていた。その主な理由は、大幅減税、規制緩和、移民規制、オバマケアの見直しなどの政策が、米国民にシンパシーをもって受け入れられたことや、米国景気の好調維持という現実があることなどによる。

しかし、ここにきて、想定外の事態が起きた。一つは、バイデン候補の奇跡の復活である。2月のサウスカロライナ州での予備選勝利、これで形勢逆転し、風向きが一気にバイデン候補に流れ始めた。勝因は黒人層からの支持。他の民主党候補が、現職大統領に対抗するにはバイデン候補をと撤退。特に、社会主義的発言をするサンダース候補では、現職大統領には勝てないという共通認識からである。

さらに、中国武漢発のコロナウイルスの影響も大きい。政府の初動は遅く、しかも役所ごとにバラバラであり、政権に感染症に即応する能力が欠けていることが露呈された。これは、トランプ政権には大きな打撃になった。

今後の注目点の一つは、E・ウォーレン候補が、誰を支持するかという点だ。かつてウォーレン候補はサンダース、バイデン両氏との確執があったことから、いずれを選択しても興味深い。もう一つは、副大統領候補に誰が指名されるかだ。バイデン候補は現在77歳で、女性と若者の人気が低い。これを払拭するため、若い女性の候補が選ばれるという見方が有力だ。たとえば、K・ハリス候補は女性、移民、黒人というだけでなく、選挙戦でバイデン候補を人種問題で鋭く追及したこともあり、面白い組み合わせが期待できる。

さて、選挙結果が日本に与える影響だが、トランプ氏再選であれば、海外駐留米軍を撤退させる可能性もあり、安全保障上のリスクが高まるだろう。仮に、バイデン氏となれば、オバマ時代に戻るだけ。いずれにしても、米国は2大政党制であるから、大統領が誰であろうと常日頃から両政党との関係を密にしておくことが、日本の国益だとした。

【略歴】
グレン・フクシマ氏は1949年、米国カリフォルニア州出身の日系3世。スタンフォード大学でBA、ハーバード大学でMBAとJDを取得。1971年に慶応大学留学を始め、1982年にはフルブライト研究員として東大法学部に、あるいは国際法律事務所勤務など、日本には20年以上滞在。米国通商代表部で対日と対中を担当する代表補代理や、在日米国商工会議所の会頭を務め、2012年からワシントンDCのシンクタンク・米国先端政策研究所(CAP)の上席研究員。主な著書に『日米経済摩擦の政治学』(朝日新聞社、1992年)が第9回大平正芳賞を受賞(1993年)、『変わるアメリカ、変わるか日本』(世界文化社、1993年)、『2001年、日本は必ずよみがえる』(文芸春秋、1999年)がある。(文責 国基研)