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国基研ろんだん

2021.07.19 (月) 印刷する

中露「準同盟」に要注意 名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授)

 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が6月28日に発表した共同声明を読むと、中露は軍事同盟を避けながら、軍事的義務を伴わない「準同盟」の関係に入ったかにみえる。中露の結束は、歴史的、地政学的に日本の安全保障にとって脅威で、中露の対日共同圧力が今後強まりそうだ。

「核心的利益」を相互支援

両首脳は、2001年に調印された中露善隣友好協力条約が7月16日に20周年を迎えるのに際してオンラインで会談し、条約が失効する来年2月以降、条約の規定に沿って5年間延長することを決め、併せて共同声明を採択した。

日本のメディアではほとんど報道されなかったが、長文の共同声明は、両国が「冷戦期に形成された軍事的・政治的な同盟は目指さない」としながら、「中露関係はそうした国家間交流の形態を超え、相手の利益を包括的に擁護する」としている。

さらに、「双方の核心的利益や領土保全で互いに支援する」ことも規定した。尖閣問題、北方領土問題で、中露はこれまで互いに中立姿勢だったが、今後共同歩調を取る可能性がある。近年、両国軍は尖閣周辺の接続海域を共同航海したり、竹島上空の共同飛行も行ったりしている。軍事関係では、両国国境地帯の兵力相互削減、軍隊間の交流拡大、合同演習の回数と範囲の拡大、軍管区間の交流強化も明記した。

さらに、貿易の拡大、自国通貨の決済、宇宙・航空分野や科学技術開発での協力、北極海航路、サイバー安保、情報通信分野など多角的な協力拡大を規定した。

対日軍事圧力が増す恐れも

中露の共同声明は外交面で、「戦略的安全保障での協力」を再三うたっており、「人権問題を主権国家の内政干渉に利用することに反対する」と欧米の人権外交に反発した。米国の短・中距離ミサイルのアジア太平洋配備や、新型コロナの感染源追及の動きも非難した。

今後の中露関係は、中国共産党中央委とロシア大統領府が直接管轄するとも規定している。習、プーチン両政権が、互いの政権延命で支援を約束した形で、現政権が存続する限り、「中露準同盟」が動揺することはなさそうだ。

ロシア軍は6月、北方領土周辺で1万人規模の大型演習を行ったほか、太平洋艦隊の約20隻がハワイ近海まで出かけて海軍演習を実施した。

安倍晋三政権の対露外交が失敗に終わった後、ロシアはアジア太平洋で対中傾斜と反米・反日外交を強めており、対日軍事圧力が増す恐れがある。