公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2021.08.30 (月) 印刷する

英空母打撃群との共同訓練の意義 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

自衛隊が8月下旬、オランダのフリゲート艦を含む英空母「クイーン・エリザベス」打撃群、米強襲揚陸艦「アメリカ」と共に、沖縄南方海上において共同訓練を行った。公開された映像では、CH-47JA「チヌーク」輸送ヘリコプターやAH-64D「アパッチ」戦闘ヘリコプター、そして米軍の輸送機「オスプレイ」が、クロス・デッキと呼称する他艦への発着訓練を行った。この意義は大きい。

英国が東アジア回帰を加速

第二次大戦中の日本海軍が大敗したミッドウエー海戦では、日本海軍の空母4隻が撃沈され、作戦を終えた味方の艦載機が着艦できず、多くの優秀なパイロットとともに失ってしまった。

仮に台湾海峡危機で米英海軍と海上自衛隊が共同作戦する場合、クロス・デッキが可能であれば、より柔軟な作戦が遂行できる。今回、クイーン・エリザベスに搭載されているステルス戦闘機F35Bの海自ヘリ搭載護衛艦「いせ」への離発着訓練は、飛行甲板改修が間に合わなかったためにできなかったが、同型艦の「ひゅうが」は改修を既に終えている。

英国は何故、東アジアに注目するのか。欧州連合(EU)から離脱したためだと説明する人達がいる。確かに、それは英国のアジア回帰を加速させたことは否めない。しかし、英国がEUから正式に離脱したのは2020年1月であり、2018年4月に英海軍はフリゲート艦「サザーランド」を北朝鮮の〝瀬取り〟取り締まりのために、8月には揚陸艦「アルビオン」を、12月にはフリゲート艦「アーガイル」を東アジアに派遣しているのである。

クイーン・エリザベス空母打撃群のアジア派遣は一過性のものかもしれないが、英国防相は、2000トン級の哨戒艦のうち、最新鋭の「タマール」と「スペイ」をアジアに常駐させると表明している。

米国も日英の準同盟化を歓迎

英国は、将来の安全保障上の震源地が東アジアにあることを見越し、海洋国家としての本来のグローバルな戦略に戻ったと捉えるべきであろう。中国の戦略ミサイル原子力潜水艦がインド洋で作戦行動すれば、ロンドンがその射程内に入ることも懸念だ。

日本は、日英関係を、かつての日英同盟に準じる準同盟として復活すべく努力すべきであろう。最初の日英同盟は、日本と戦争になった場合、英国とも戦わなければならなくなることを恐れた米国の圧力で1923年、ワシントン会議で廃棄に至った。しかし現在は米国も日英の準同盟を歓迎している。

ファイブ・アイズと呼ばれる秘密情報交換協定の締結国のうち4カ国はアジア・太平洋地域にある。ボリス・ジョンソン英首相も日本のファイブ・アイズ加盟の可能性に言及している。日本は、これを機に早急にスパイ防止法の制定を急ぎ、日本の防諜体制を強化してファイブ・アイズへの加盟に着手すべきだ。