2022年1月19日、バイデン・ホワイトハウスと民主党議員の大多数が推進したフィリバスター(採決阻止)ルール変更案が否決された。日本政治は、この意味を充分理解しておかねば、引き続き気候変動問題などでカモにされかねない。
投票法改正の思惑も費える
全ての議事が単純過半数で進められる米下院と異なり、上院では、5分の3(60人)以上が賛成しないと審議を打ち切って採決に入れない独自の院内規則がある。この規則自体は憲法に規定があるわけでもなく、過半数の賛成で変更できる。かつては上院が承認権を持つ政権幹部や裁判官の人事もこのルールの適用対象だったが、今は外され、法案についてのみ規則が残っている。
現在、大統領、上下両院の多数を握る民主党執行部は、今年11月の中間選挙で敗北が濃厚な中、左翼的諸法案の駆け込み成立を目指し、フィリバスター・ルール廃止案を上院本会議で投票に掛けた。細かく言えば、当初は全廃案だったが、最終的に、すでに民主党多数の下院を通過した投票法改正案に絞った部分的廃止案とした。
この投票法改正案は、郵便投票を一般化すると同時に、自署以外の記載を求めてはならないと規定するなど、本人確認を緩やかにした点に最大の特徴がある。これが上院でも可決され、大統領の署名も得て成立すれば(バイデン氏は署名を確約していた)、例えば自署以外に社会保障番号の記載も求めるフロリダ州法などは無効になる。共和党が「不正投票推進法」であり「民主党永遠支配確立法」だと批判した所以である。
脱炭素で米政治の動き注視を
目下、上院(定員100議席)は民主、共和ちょうど50議席ずつで同数である。民主党側は、自陣50票プラス上院議長を兼ねるカマラ・ハリス副大統領の決定票によって廃止を実現しようと試みたわけだが、結局、共和党の全議員に加え、民主党議員2人が反対に回り、成立しなかった。反対したのは、いずれも保守派が強い州選出のジョー・マンチン(ウエストバージニア州)、カーステン・シネマ(アリゾナ州)両議員である。この結果、中間選挙での民主党勝利は益々難しくなった。
また、グリーン・ニューディール関連法案など左翼的措置の実現も遠のいた。大統領およびジョン・ケリー気候変動特使を中心にバイデン政権は「思い切った脱炭素」政策への協力を日本に求め続けるだろうが、自らは関連法案を通せない状況がいよいよはっきりした。米政治の動きを見誤ってはならない。