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2024.12.09 (月) 印刷する

『朝鮮人「徴用工」問題 史料を読み解く』で記したこと 長谷亮介・歴史認識問題研究会研究員

長谷亮介・歴史認識問題研究会研究員は、12月6日(金)、国基研企画委員会にて、新刊書『朝鮮人「徴用工」問題 史料を読み解く』(2024.11、草思社)で著した内容について詳しく述べ、企画委員らと意見を交換した。

概要は以下のとおり。

【概要】
長谷氏は新刊自著を持参し紹介した。本書の内容は、可能な限り客観的な立場でこれまでの論争の過程を検証すること、すなわち朝鮮人戦時労働者は強制連行・強制労働か否か、肯定派、否定派双方の論説を取り上げた。また、一次史料を部分的にではなく、全体的に分析し、従来の朝鮮人強制連行説が、学術的に説得力があるか否かも考察したという。

〇朝鮮人戦時労働者「強制連行」「強制労働」説への反論
著書の前半・第1部では、先行研究の例として朴慶植氏の著書『朝鮮人強制連行の記録』(1965年)を紹介した。本書には事実確認の曖昧な箇所のほか、憶測と誤謬が多いことを指摘した。しかし、後に日本で本書を元に強制連行・強制労働を拡大解釈する人々(強制連行派と呼称)が増殖することになる。

これに対し、保守派として西岡力氏や鄭大均氏の反論を紹介した。戦時労務動員が開始される1939年から45年までに日本へ渡航した240万人の朝鮮人のうち、労務動員者は60万人で、残り180万人は自発的渡航者であるという西岡説に学術的説得力があるという。

さらに先行研究で強制連行派が注目しない一次史料(契約更新時の奨励金など)を紐解いて見ると、強制性があるとは言えない事実が確認された。強制連行説に不都合な真実というわけである。

〇一次史料から見た朝鮮人労働者の実態
後半・第2部では、先行研究にない一次史料を発掘し、新たな視点を提供している。例えば日曹天塩炭鉱の朝鮮人労働者の賃金表「稼働成績並賃金収支明細表」で、朝鮮人労働者が高額の賃金を得ていた実態などが詳細に記録されていた。

 以下のような記録の存在は、労働が強制されたものでないことを示している。
・新人の徴用労働者でも高額の賃金を稼いでいた。
・月収の低い者は天引き貯金(愛国貯金)が免除されていた。
・会社への任意貯金は本当に任意であった。
・退職した朝鮮人からお礼の手紙が届いていた。
・朝鮮人は日本人よりも多様な理由(無断欠勤者も)で仕事を休めていた。
・1942年作成の資料で朝鮮人にも傷病補償が適用されていた。

 最後に長谷氏は、佐渡金山や三井三池炭鉱の件についても検証を加え、事実に一切向き合わない強制連行派は、イデオロギー色が強く、都合の悪い史料を除外するなど、学問的にも不誠実であると指摘した。

【略歴】
1986年、熊本生まれ。熊本大学文学部歴史学科卒業、2016年、法政大学大学院政治学研究科国際日本学インスティテュート博士後期課程修了、学術博士。現在、歴史認識問題研究会研究員、麗澤大学国際問題研究センター客員研究員。単著『朝鮮人「徴用工」問題 史料を読み解く』(2024.11、草思社)、共著『朝鮮人戦時労働の実態』(2021.3、産業遺産国民会議)など。 (文責国基研)