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2026.09.24 (木) 印刷する

拉致問題でもっと海外への情報発信を 荒木和博(特定失踪者問題調査会代表)

筆者は9月15日から19日まで、特定失踪者家族会の吉見美保副会長、森本美砂事務局次長、宮澤新平会員と共にジュネーブを訪問した。主たる目的は国連人権理事会の強制的失踪作業部会で特定失踪者(北朝鮮に拉致された可能性の排除できない失踪者)の家族が陳述することだが、それ以外にも国連や非政府組織(NGO)の関係者らに面会し、18日には市内のホテルでYouTubeライブを併用した懇談会も開催した。慌ただしかったが充実した日程だった。途中の状況については懇談会を含め5回やったYouTubeライブでご覧になれる。関心のある方はぜひ視聴いただきたい。

様々な形でご支援をいただいた皆様に改めて心から御礼申し上げる次第である。

日本が牽引する国際的救出活動

ところで、度々「日本以外の国の拉致被害者救出の動きはどうなっているのですか」と質問を受けるので、簡単に整理しておきたい。北朝鮮に拉致された外国人で一番多いのが韓国人である。朝鮮戦争の3年間に拉致された韓国人の数は約9万6000人、休戦後の拉致被害者は現在帰国できていない人で約500人に上る。次に多いのが日本人で、それ以外にはレバノン、タイ、マレーシア、シンガポール、ルーマニア、フランス、イタリア、オランダ、マカオ等から被害者が出ている。

日本では、被害者救出のため家族の会(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会、特定失踪者家族会)以外に支援者の団体が多数存在し、私が代表者を務めている特定失踪者問題調査会、予備役ブルーリボンの会、鉄道愛好者ブルーリボンの会もそれに該当する。

一方、韓国は被害者の数は多いが、ほぼ家族だけの活動で、家族以外の支援者はごく一部である。運動としても盛り上がっているとは言えない。さらに、それ以外の国となると被害者自身が一つの国で1人かせいぜい数人であり、救出への動きはほとんどない。タイ人拉致被害者アノーチャ・パンチョイさんの救援をタイ政府や国会議員に求めたり、ルーマニア人拉致被害者ドイナ・ブンベアさんの家族をフォローしたりしているのは、タイ在住の日本人、海老原智治氏(北朝鮮に拉致された人々を救援する会チェンマイ代表)である。

日本と韓国以外は拉致被害者の数がごく僅かで、それぞれの国で世論を盛り上げるのは難しい。結果は出ていないが、拉致被害者救出の活動はある意味、日本が牽引しているとも言える。

利用できる外国は使おう

日本政府の対応は、表向きは他の国に比べればはるかに進んでいる。首相をはじめ閣僚や国会議員が海外に行くときにブルーリボンバッジを着けて、面会した各国の要人に協力を要請することはしているのだから。韓国の拉致被害者家族からすればそれだけでも羨望の対象なのだが、では具体的に何の協力を求めるかとなると極めて心許ない。基本的にはただ「お願いします」だけでその先がないのである。

米国への協力要請も必要だろう。しかし、あの大統領が拉致問題に関わることは「諸刃の剣」である。何らかの進展につながったとしても多額の請求書が回されてくることは明らかだし、最悪の場合は「これで終わりにしろ」とも言いかねない。そのとき拒絶することはできるのだろうか。

拉致被害者の救出は安全保障の問題であり、日本が主体的にやらなければならないことだ。外国はあくまで利用するものでしかない(もちろん、そのためには色々な対価が必要だろうが)。逆に言えば、利用できるなら米国、韓国はもちろん中国でもロシアでもイランでもイスラエルでも使えば良いということだ。

知られていない拉致の全容

今回、ジュネーブに私たちが赴いたのは、国連に救出してもらおうと思ったわけではない。もちろんそんなことができるはずがないことは、特定失踪者の家族も十分に分かっている。

しかし、これまで日本政府は、認定被害者以外の拉致についてはほとんど国際的な情報発信をしてこなかった。そして、その認定被害者は松本京子さん以来20年間増えていないのだから、拉致問題の全体像が国際的に知られるはずはない。

昨今の強制的失踪作業部会による北朝鮮への働きかけは一昨年、特定失踪者家族会が作業部会に警察及び調査会の公開特定失踪者535人のリストを提出したことから始まっており、作業部会はこれまで特定失踪者40人の個人名を挙げて北朝鮮に安否確認と人権保障を求めている。日本政府がやっていないということは「伸びしろ」があるということでもあり、新たな変化や情報収集につながる期待がある。

ともかく日本が(政府任せではなく私たち民間も含め)動いていかなければならない。私はまず英語での情報発信の強化をしていこうと思っている。様々な分野の方々の協力をお願いする次第である。(了)