10月30日、今月の総合安全保障プロジェクト月次報告会を開催した。
まず中川真紀・国基研研究員が、岩田清文・国基研副理事長による「台湾の重要性」に関するレポートを踏まえ、前回の「日本にとっての台湾の重要性」という視点を変え、今回は「中国にとっての台湾の軍事的価値と日本への影響」として検討した結果を発表。続いて、岩田副理事長が「なぜ習近平氏は台湾統一にこれほど執念を燃やすのか」と題して報告した。
第1部は国会議員、第2部は主要メディアを対象として実施し、参加した議員、記者、企画委員らとの間で活発な質疑応答が行われた。以下にその発表概要を紹介する。
【月次報告】
国会議員向け(午前8時~9時30分)、メディア向け(午前11時30分~午後1時)
【質疑応答】
Q: 仮に台湾が統一された場合、日本側の防衛体制にはどれほどの影響があるか。
A: 日米中のどの陣営も、軍事力という資源アセットの配分方法が大きく変わる。中国側の矛先が台湾から日本やフィリピンへと直接指向されるようになれば、日米側の防衛負担は激増し、抜本的な戦略的転換を余儀なくされる。航空戦力や海軍戦力の配分についても、日米で再調整が必要不可欠だ。特に、水中の領域において西太平洋の日米優位性を確保できるかが、今後の極めて重要な課題になるだろう。
Q: 習近平氏の執念は理解できるが、仮に同氏が失脚した場合、共産党の「台湾統一」方針は変わるのか。
A: 仮に習近平氏が退陣したとしても、基本方針が大きく変わることはない。共産党体制が存続する限り、台湾統一は共産党の至上命令(使命)であり続けるので、台湾問題の本質は継続するだろう。
Q: いわゆる「2027年問題」が取り沙汰されているが、仮に2027年を過ぎても台湾の現状が維持されていた場合、東アジアの戦略環境に影響はあるか。
A: 2027年という数字はあくまで軍事的な指標の一つ(解放軍健軍100周年)であり、共産党の決定事項というわけではない。中国研究者としても著名なオーストラリアのケビン・ラッド元首相は、2030年に向け台湾侵攻の確率が高まるとの分析を示す。次の台湾総統選の動向が引き金になる可能性もあり、両岸の緊張関係は継続して警戒する必要がある。
Q: 中国が台湾に侵攻したとして、占領後の統治コストは香港の比ではなく、相当高くなると予想されるが、果たして維持可能なのか。
A: 台湾の人口2300万人を統治するには莫大なコストを要することは確かである。しかし台湾が有する半導体産業を原資とした経済力は計り知れず、それが中国にもたらす外貨収入や技術的利益は莫大である。現在、台湾の対中投資が激減している中でも、台湾経済が堅調に成長している事実が、その強さを物語っている。したがって、経済的コストという観点から言えば、中国側にとって維持することは十分可能だろう。ただし、力による支配で台湾人の「民心」を根底から変えることは極めて困難である。(文責 国基研)