2017年2月の記事一覧
的外れな国会の「戦闘」論議 島田洋一(福井県立大学教授)
南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊の日報に「戦闘」の文字があったことに絡み、稲田朋美防衛相が2月8日の衆院予算委員会で、「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」と説明したことを一部野党が不適切と追及し、辞任要求にまで発展した。 PKOは、紛争当事者間に停戦合意が成立していることが、日本...
金正男はなぜ殺されたのか 久保田るり子(産経新聞編集委員)
たった2秒の犯行で金正男は殺害された。殺害の瞬間を捉えた防犯ビデオの映像で犯行の様子が全世界に報じられた。彼はなぜ、このタイミングで殺されなければならなかったのか。 北朝鮮の犯行であることは疑うべくもない。金正恩が5年前、金正男暗殺指令を出していたことは、韓国で拘束された北朝鮮工作員の証言で明らかになっている。金正恩に「正男を除去しなければならない」と異母兄を疎ましく思う怨念があったのは疑う...
論争で明らかになった2人の意見違い 西岡力(東京基督教大学教授)
富坂氏との論争で氏と私の間にかなり考え方の違いがあることが分かりました。そのことがわかったことで、色々な論点が見えてきました。その意味で富坂氏に感謝します。その上で富坂氏に短くお答えします。 富坂氏は2月13日付「ろんだん」欄で次のようにご批判くださいました。 〈「日韓合意で韓国の約束違反を問題にしない富坂氏が」との記述ですが、私は「問題にしない」と発言・記述したことはありません。品位のな...
いつ、どこからでも-脅威増す北のミサイル 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
北朝鮮は日本時間の12日朝、弾道ミサイルを西岸から日本海に向けて発射した。これは米国で日米首脳会談が行われた直後というタイミングであり、政治的には日米同盟に対する挑発の意味合いがあったと思われるが、ここでは軍事的な意味について考察してみたい。 当初は「ムスダンと見られる」との報道であったが、西岸から日本海に向けて発射されたことから、その可能性は低いと思った。理由はムスダンに使用されている液体...
米国抜きでもTPPが必要ないくつもの理由 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
一縷の望みもむなしく、11日の日米首脳会談後の共同声明で、米国は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱決定で翻意する意思のないことが決定的となった。これにより、わが国の成長戦略も見直しが必至となっている。 今後の日本の平和と経済的繁栄には、アジア太平洋地域に自由で開放的、かつ透明性の高いルールを体現したアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現が必須である。このままTPPが頓挫した場合、そ...
根拠なきレッテル貼り―西岡氏の再反論への反論 富坂聰(拓殖大学教授)
西岡氏への再度の反論に際し、まず私の発言や立場を不正確に伝えるルール違反をしないことをお願いします。例えば、「日韓合意で韓国の約束違反を問題にしない富坂氏が」との記述ですが、私は「問題にしない」と発言・記述したことはありません。品位のない行為は慎んでください。 私は前回2月1日付で、「西岡氏の文章を読む限り、大使らを一時帰国させるという強い措置であったからこそ、ああいう反応を引き出せたと納得...
支持の深層見ないトランプ報道への違和感 石川弘修(ジャーナリスト)
ドナルド・トランプ米新大統領の報道が連日のようにテレビや新聞をにぎわしている。先日、訪日中の米保守派の歴史家、ジョージ・ナッシュ氏が「アメリカの保守主義とポピュリズム」と題して講演した。ナッシュ氏は、ハーバート・フーバー第31代米大統領の研究家として著名で、フランクリン・ルーズベルト第32代大統領と日米戦争の隠された歴史を追究した「Freedom Betrayed」(裏切られた自由)の編者として...
富坂氏の反論に再度反論する 西岡力(東京基督教大学教授)
本研究所企画委員を私とともに務めている富坂聰(拓殖大学教授)氏が、2月1日付本欄に「慰安婦像撤去を最終目的にするな‐西岡氏への反論」を寄稿し、私の批判(1月24日付「大使召還は効果あり。富坂氏への反論に代えて」)に回答くださった。言論による論争は問題の本質に迫る重要な手段だと常に考えている私としてはとてもうれしいことだった。そこで回答に対して再反論して論争を続けたい。 富坂氏の挙げた論点にそ...
東欧でも高まるトランプ政権への懸念 三好範英(読売新聞編集委員)
トランプ米新大統領の一挙手一投足に世界の注目が集まる中、最も強い懸念を持って見ているのが東欧諸国(バルト3国を含む)だろう。果たして米国はこの地域の安全保障にこれまで通りの明確な関与を約束してくれるのか――。 欧州連合(EU)加盟国の政治家17人が1月10日、トランプ氏に書簡を送り、新政権スタート後も米国は「対ロシア制裁を継続し」「ウクライナの分割を受け入れてはならない」と訴えた。書簡には、...
アベノミクス、唱えるだけでは前に進まず 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
2012年12月に発足した第2次安倍内閣が掲げたアベノミクスも5年目に突入した。2015年9月には第2次ステージに移ると宣言し、「新3本の矢」(希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障)を番えたが、第1次ステージの「3本の矢」(「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」)の成果はどうなったのか。 アベノミクスの「1丁目1番地」と位置付けられた「...
敢えて朴裕河氏の『帝国の慰安婦』を批判する 西岡力(東京基督教大学教授)
朴裕河氏の著書『帝国の慰安婦』を批判したい。私はすでに昨年、月刊誌『歴史通』2016年9月号に拙文「韓国で名誉毀損 朴裕河『帝国の慰安婦』をあえて批判する」を寄せて本格的に批判を行った。今回、朴氏が刑事裁判で無罪判決を得たので、日本では彼女の評価が高まった。しかし、著書が名所毀損に当たるかどうかという問題と、その主張が正しいかという問題はまったく別だ。 彼女は同書の記述によって、韓国の元慰安...
慰安婦像撤去を最終目的にするな‐西岡氏への反論 富坂聰(拓殖大学教授)
西岡力氏が1月24日付の本欄に書いた『大使召還は効果あり。富坂氏への反論に代えて』に対し、短く反論します。 西岡氏の反論は1月11日付の拙稿『駐韓大使の一時帰国は早計に過ぎる』に対してですが、私はこの中で日本外交があまりに対症療法に陥っていることを問題視しました。日本外交は最終目的地(つまり最終的に何が国益か)を定めないまま、日々持ち上がる問題に受け身で対応してばかりいるために一貫性を欠き、...