公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

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2021年5月の記事一覧

 国内の新型コロナウイルスのワクチン接種は引き続き混乱しており、100人当たりの接種回数は5月28日時点で8.9人で、世界108位だ。(日本経済新聞と英フィナンシャル・タイムズ紙の調査)。イスラエルは同116人と2回目の接種に入り、米国も87人。日本は手間取っていた韓国(12人)にも抜かれた。ワクチン開発競争は力負けだったが、戦略物資となったワクチン確保は熾烈な外交競争であり、日本の外交力不足を見...

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 「気を付けよう、暗い夜道と3回生」―。これは麻生太郎副総理兼財務相が4月1日の自民党麻生派例会で、防犯に使われるフレーズを使って、自民党が政権に復帰した2012年以降3回の衆院選で当選してきた若手らに対し、選挙準備を怠らないよう戒めた言葉だ。この「3回生」をそっくり「性的少数者(LGBT)法案賛同者」、「親中派」、「選択的夫婦別姓推進論者」に入れ替えても通じそうだ。 宗旨替えした稲田元防衛...

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 アメリカのバイデン政権は、多くの外交・軍事資源を米中新冷戦の「アジア正面」にシフトしようとするものの、中東の火薬庫とロシアの拡張主義という2つの壁に阻まれる。パレスチナ自治区ガザを支配するイスラム過激派組織ハマスのイスラエル攻撃と、北極圏の覇権を握ろうとするロシアへの対処である。とりわけ、イスラエルとハマスの戦闘は、長引けばアメリカ外交の柔軟性が失われ、代わって中国に国際社会における指導力を誇示...

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 「日本にもジェンダーという毒が一滴ずつ漏れてきている」―産経新聞の「正論」欄(令和2年11月4日付)にこう書いたのは、麗澤大学のジェイソン・モーガン准教授だ。モーガン氏は「『ジェンダーフリー』という和製英語のおかしな教育が学校に持ち込まれ、批判を浴びてきた」と記したが、いまそれが国会にまで持ち込まれ、一滴どころか大きな河の流れとなって、性的少数者(LGBT)への理解増進を図る法案の成立を目指す動...

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 2021年春、イスラエルとハマスの軍事衝突は、ガザを主戦場に長年繰り返されるパレスチナ問題の根深さと悲惨さ、そして解決の至難さを、私たちにあらためて考えさせる機会となった。これを奇貨として政治解決へ主導する国際社会の取り組みが必須だ。 過去4年間、トランプ米政権時代の中東は、昨年9月の「アブラハム合意」(イスラエルと湾岸諸国の国交正常化)に見られるように、パレスチナ問題の解決を事実上棚上げ...

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 思想が人類の歴史を動かしていると思うのは、人文学系の者(小生を含む)にありがちな錯覚である。たとえば、18世紀前半にフランスの中央部でカトリシズムが劇的に衰退し、半世紀後のフランス革命の伏線となったが、それはヴォルテール(1694~1778)が理神論と教会批判の論陣を張った結果ではなかった。哲学者は時代精神に明確な言葉を与えたにすぎない。 経済を人類史の主動因と見做す人は今日でも多かろう。...

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 東京五輪・パラリンピックの中止は野党共闘の「象徴」のようになっている。五輪中止を主張してきた共産党に立憲民主党も賛同し、国民民主党も延期を言い出したからだ。アスリートが日頃の練習の成果を競う場である五輪の開催の是非が政争の具になるのは望ましくない。野党の攻勢を許している責任は政府・与党、そして東京都にもある。 菅義偉首相の動静を伝える産経新聞の「菅日誌」をみると、首相が東京都の小池百合子知...

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 中国の宇宙開発は1992年に設定された「963計画」と呼ばれる長期計画に基づいて、アメリカに追いつき、肩を並べる宇宙強国になることを目指している。その一つの到達点となるのが宇宙ステーションの建設であり、その最初のパーツとなる核心モジュールを4月29日に打ち上げた。 そのモジュールを打ち上げるための巨大ロケットである長征5号Bのコアが制御されないまま大気圏に再突入することとなり、燃え残った部...

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 4月の日米首脳会談後の共同声明で、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」ことが盛り込まれた。そのことについて、日本が米中間の武力紛争に巻き込まれるかのような論調が出回っているが、台湾問題は決して他人事ではなく日本の安全保障そのものである。 「明日の台湾」は「明後日の沖縄」 「他人事ではない」理由の第一は、マラッカ海峡から日本に至る大切な海上交通...

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