公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

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2022年12月の記事一覧

台湾の防衛体制強化および国際的地位の向上を目指した米国の「台湾政策法」は、予想通り2023年度国防権限法に一部組み込まれ、一部積み残される形でひとまず決着した。国防権限法は上下両院を通過後、12月23日にバイデン大統領が署名して成立した。 「ひとまず」と書いたのは、来年1月からの新議会において、新たな台湾関連法案が、今回積み残された部分の新バージョンも含め、次々提出されると見られるためである...

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12月16日に閣議決定された安全保障3文書は多くの安保関係者に高く評価され、筆者も同意するが、敢えて不満足なところを挙げると、その一つが国防教育の強化を謳っていない点である。 国家安全保障戦略の始めの方に「国家としての力の発揮は国民の決意から始まる」(5ページ)とあるのは、まさにその通りで、現在電力施設の多くをロシアの攻撃によって破壊され極寒の中にあってもなお多くのウクライナ国民が対露戦を戦...

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「なぜ北朝鮮の金正恩総書記は娘を公開したのか」という質問をよく受ける。そのたびに私は「本人に聞かなければ分からないが、日韓のいろいろな解説者が語っているような大きな意味はないと思う」と答えてきた。 この質問に対して、曖昧な推測でなく、論理立てて答えてくれた人物がいた。2019年9月に韓国に亡命した元駐クウェート北朝鮮代理大使のリュ・ヒョヌ氏(49)だ。リュ氏は金総書記が娘を公開した理由を、極...

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いささか旧聞に属するが、相模湾で11月6日に行われた海上自衛隊主催の国際観艦式を取材した。国際観艦式とは、国家的な節目となる記念日などに、外国海軍艦艇が参加して行われる海軍の行事だ。最高指揮官が観閲し、海軍軍人の士気の高揚や各国海軍間の信頼醸成、友好親善を促進することが目的である。 これとは別に日本では、自衛隊の最高指揮官である首相が自衛隊を観閲する観閲式が、陸海空3自衛隊の持ち回りで年に1...

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12月16日に「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の、いわゆる安保3文書が閣議決定された。これに先立って政権与党である自民党と公明党が12日に3文書に合意したが、ペロシ米下院議長訪台後に中国が我が国の排他的経済水域に弾道ミサイルを着弾させたことに関する「国家防衛戦略」の記述で「わが国および地域住民に脅威と受け止められた」の自民党案に対し、公明党は「わが国および」を削除するように主...

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湾岸で二重の覇権争い 世界第3位の石油生産量を誇るアラブ世界の盟主サウジアラビアに世界第2位の経済大国・中国が接近し、両国は12月8日、「戦略的パートナーシップ協定」に調印した。世界のエネルギー資源の6割以上を擁するペルシャ湾岸では、40年前のイラン・イスラム革命で西側の権益を守るパーレビ王制が崩壊して以降、エネルギー資源をめぐって域内外パワーによる覇権争いが激化した。今日では、地域覇権を目...

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11月末に防衛研究所が公表した報告書『中国安全保障レポート2023―認知領域とグレーゾーン事態の掌握を目指す中国』は、現状の分析と報告が中心で、中国の認知戦にどう対応すべきかの具体策が書かれていない。 認知戦とは、「敵の認知・思考・決定を形成もしくはコントロールすることを目指す作戦」(報告書42ページ)と定義される。卑近な例として、某テレビ番組のレギュラー・コメンテーターが言うような「戦争に...

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12月7日、政府が航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改称する方針を固めたと報じられた。これに関連して、海上自衛隊も海洋自衛隊と改称すべきではないかと思う。その理由は、海上自衛隊が海の上だけを守っているのではなく、潜水艦の運用や機雷掃海などにより海面の下も担当しているので、現在の名称では実態にそぐわないという理由が一つ。もう一つは近年、海底ケーブルや海底パイプラインといったインフラの重要性が高まっているの...

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11月3日、米共和党のビル・ハガティ、マルコ・ルビオ両上院議員が連名で、オースティン国防長官あてに公開書簡を出した。沖縄基地からのF15戦闘機全機引き揚げ方針に疑問を呈する内容である。沖縄には2飛行中隊、計50機が配備され、日本に展開する米軍戦闘機総数約100機の半数に当たる。 「沖縄からのF15撤収に懸念」 書簡は次のように言う。 「中国人民解放軍の高まる脅威に対抗するため、空...

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11月25日、尖閣諸島の大正島周辺の領海内に中国海警局の2隻の警備船(海警船)が侵入した。うち1隻は、76ミリ砲と見られる砲を搭載していた。これまでの海警船の搭載砲は40ミリまでであったが、軍艦並みの装備に代わっている。76ミリ砲の最大射程はおよそ16キロ。しかし、我が国の海上保安庁の最大級巡視船「あきつき」の装備は40ミリ機銃であり、その最大射程は約5キロと能力に著しい隔たりがある。当然、警備戦...

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2022年10月の中国共産党第20回全国代表大会(党大会)により、党・軍・国家の三権を掌握する習近平を頂点に、その周りを側近で固めた独裁体制が完成した。毛沢東独裁への反省で生まれた集団指導体制の終焉は、中国に何をもたらすのか。 混乱を勝ち抜いた毛沢東 毛沢東は1945年の中国共産党第7回大会(延安)で党と軍の支配を確立し、党規約に「毛沢東思想を指導思想とする」と明記された。1954年に...

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