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2014.03.10 (月) 印刷する

インドの外交専門家から見た日本の存在感は? 岡本幸治(大阪国際大学名誉教授)

 第二次安倍内閣は二年目に入ったが、この間安倍首相の業績として高く評価できるのは対アジア外交、特に台頭しつつある大国インドとの関係を前進させたことである。僕は1970年代なかばに初めてインドに長期滞在し、昨年末両陛下が訪問されたJNU(初代首相ネルーを顕彰して作られた大学院大学)で教えたことがある。その頃既に日本に対するインド人の評価は高かったが、それは戦禍の中から忽ち米国に次ぐ経済大国となった経済関連にほぼ限られていた。
 一方日本外交に関しては、インド知識層の評価は低かった。「日本外交は米国外交を見ておればわかる。その追随外交でしかないからね」と酷評する教授もいたほどである。僕はその後も毎年訪印し、行けばJNUの宿舎で何日かを過ごしてインド人学者の著書論文の類を見ることにしているが、国際政治・国際関係を扱った単行本の内容を見ると、過去数十年殆ど全く変化がないことにがっかりする。それは各国との関係をあれこれ解説し論じている大部の書物においてさえ、対日外交を独自に扱った章が見当たらないという事実である。インドにおける日本研究者の層が薄いという構造的問題もあるが、今や全方位外交を展開中のインドにおける日本の外交的存在感が、未だに小さいことの端的な現れでもある。安倍政権による安全保障面及び原子力協定を含む「対印全方位外交」が、今後急速な前進を遂げることを期待したい。