2013年8月15日、朝鮮半島情勢に詳しいデニス・ハルピン(元米下院外交委員長スタッフ。現ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院研究員)が慰安婦問題で一文を書いた。私にとっては、ワシントンに行くたび、また彼が東京に来るたび、拉致を含む北朝鮮問題で意見交換、そして「共闘」してきた友人である。しかし歴史問題でははっきり韓国寄りだ。そうした人物はワシントンに少なくない。
彼に以前、慰安婦問題で日本を批判する論拠を聞くと、外務省の英文サイトを挙げた。加藤官房長官談話、河野官房長官談話と並んでおり、それを読めば日本による強制連行を「かつては」日本政府が認めていたことは明らかで、にもかかわらず最近「修正主義」の動きがあることを懸念するというわけだ。これもワシントンでは珍しくない反応である。河野談話をはじめ「事なかれ主義」外交のつけは大きい。
さて、ハルピンはまず、読売新聞社説(2013年8月1日付)が、「(コリアン系団体が)旧日本軍が韓国の若い女性や少女さえも慰安婦として強制的に連行したという誤ったイメージを米国に広めようとしている」「(政府の調査で)日本軍による強制連行を裏付けるような文書は発見できなかった」等としたのを批判し、「決定的な証拠」(smoking gun)があるとしている。
ハルピンが挙げる「証拠」とは、米占領軍が行った元慰安所経営者からの聞き取り調書(1945年11月15日付)である。米下院で日本非難慰安婦決議が問題になっていた2006年に、当時のヘンリー・ハイド外交委員長の元に提出された資料の一つだったという。ハイド委員長は日米関係を考慮して決議案に消極的だったが、同資料を説明されて“smoking gun”と一声発したという。
当該経営者は、戦地に赴く朝鮮人慰安婦の船便チケットや医療サービスを日本軍が負担したと語っている。従って軍が娼館設置を「是認」したことは明らかだとハルピンは強調する。しかし、そんなことは日本側の誰もが初めから認めている。
日本軍による強制連行があったかどうかという最大の論点については、ハルピンが引用する経営者は、19才から31才までの朝鮮人女性22人をそれぞれの家族に前金(ルックスや年齢に応じ300円から1000円)を払って娼婦に雇ったと述べている。むしろ、軍による拉致を否定する証言の一つに他ならない(年齢的にも、この場合、韓国のアジテーターが言うようなローティーンの少女ではない)。
このハルピン論文は、反日勢力の捏造に対抗する上で、むしろ日本政府が大いに活用すべき資料の一つと言えよう。原文は下記で読める。
MacArthur Document Reports Imperial
Japanese Military’s “Sanction” of Comfort Women Brothels
August 15, 2013 By Dennis Halpin
http://uskoreainstitute.org/2013/08/15/dhalpin081513/