公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2014.09.01 (月) 印刷する

慰安婦については強制性こそ問題である 髙池勝彦(弁護士)

 朝日新聞が、32年間真実であると言ひ続けてきた吉田清治発言を取り消した。しかし、朝日新聞は、言はれなき中傷にさらされてゐるなど、自分が被害者であると言はんばかりである。朝日新聞は、その立場から自分の味方の有名人を登場させて自己弁護を図つてゐる。

8月28日付で、高橋源一郎といふ作家を登場させた。高橋は、「強制連行があったかどうかは、もともと本質的な問題ではなかったはずだ。なのに……いつしかそれは『慰安婦問題』の中心的論点になってしまった」といふ。女性の人権とか、戦争と性とか、戦争における女性の立場などが問題だと言ひたいのかもしれない。

とんでもない話である。「慰安婦問題」については、「強制連行があつたかどうか」が本質的問題である。我が国は、朝鮮人女性を強制連行し、慰安婦にしたから性奴隷であると、今世界中で非難されてゐるのである。

高橋は、戦場での慰安婦、徴兵された兵士、かれら一人一人の具体的な生活や行動といつた「想像の及ばぬ」世界にもつと謙虚になるべきだといふ。これは重要である。しかしこれは一般的な問題で、「慰安婦問題」の本質とは別問題である。

今問題となつてゐることは、「強制連行」を世界に広めた朝日の犯罪性を明らかにして初めて戦争一般において慰安婦を含む個々の人間のあり方を考えへることができるのである。高橋の議論は、日本人以外に戦争や性、慰安婦について考へさせずに、日本人は悪いといふことで話は終りになつてしまふ。高橋のやうな議論が少なくない。注意を要する。