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2014.09.02 (火) 印刷する

米下院慰安婦決議は反日勢力と外務省の合作 島田洋一(福井県立大学教授)

 2007年1月31日、マイク・ホンダ議員が、米議会下院に、「慰安婦日本非難決議案」を提出した際、趣旨説明にこうある。
 「この決議の目的は、日本を叩いたり辱めたりすることではありません。暴虐を生き抜いた、わずかに残る女性たちに正義をもたらそうとするものです。……さらにこの決議は、和解を促し、その機会を提供することを意図しています。ちょうど、米議会が、(決議や立法措置によって)第二次大戦中、不当に収容所に押し込められた、日本人を祖先に持つアメリカ市民たちに公式に謝罪したように。若年時、収容所に押し込められた者として、私は、過去に対して無知であってはならないこと、そして、政府の行動によって得られる和解は長く意味をもちつづけることを直接知っています。議長。率直に言って、わずかに残る、この重荷を背負った慰安婦たちは、今や死の時を迎えています。われわれは、この決議を進めることで、彼女たちが少しでも心の平安を得られるよう手助けせねばなりません。」
 この「趣旨」に基づき、ホンダ決議案は、「(日本の)首相が、その公的資格において、公式声明を通じて」、次の「事実」を「明確に認め、謝罪し、歴史的責任を受け入れる」こと、またこの「事実」を否定しようとする動きを「明確かつ公的に斥ける」こと、そして「この恐るべき犯罪について現在および将来の世代に教育を行うこと」を求めるものであった。
 これに対し、加藤良三駐米大使名で出された「反論書簡」(2月13日付)を見ると、村山、橋本、小渕、森、小泉と近年のすべての首相が真摯な謝罪文を出している、安倍首相も従来の方針を受け継ぐと国会答弁している、「アジア女性基金」を通じ金銭的補償もしてきた等々、いかに日本側が謝罪と反省の意を示してきたかという「逃げの反論」のみ並べられ、強制連行や性奴隷化などないという肝心の事実には何ら触れていない。
 実は、ホンダ決議案は、こうした外務省主導の「努力」を評価する旨を明記しており、その点で、従来の同種決議案とは異なっていた。
 すなわち、河野談話やアジア女性基金などの取り組みは「賞賛さるべき」だが、与党自民党の中に、河野談話見直しを目指す「失望させる」動きがあり、そのことが日本の「誠実さ」への疑いを生み、元慰安婦の多くがアジア女性基金の補償金受け取りを拒む事態になっているという状況認識が示され、それゆえ、首相が中心となって「公式声明」「教育」等々明確な措置を取らねばならない、という決議本文につながる。日本の外務当局は終始免罪される構造になっているわけだ。
 安倍首相が、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」に集うような保守派の言動を抑え込み、文科省を指導して中国・韓国など「近隣諸国」が納得する教科書を作らせよとの趣旨は、まさに外務省主流の発想と軌を一にする。
 当時米議会には、決議は日本側(外務省)の意向にも配慮した内容に改善されたため、日米関係を毀損することはないとの認識もあったようだ。「逃げの反論」のみ行うことで、外務省が決議通過を後押ししたと言える。米下院の慰安婦日本非難決議は、その意味で、反日勢力と外務省の合作であった。