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2014.10.31 (金) 印刷する

東独はベルリンの壁を「反ファシスト防護壁」 島田洋一(福井県立大学教授)

 「反ファシスト戦争」に勝利し、歴史の「最終審判」で正しいとされた側が中華人民共和国やアメリカであり、敗北し、誤りと最終審判された側が日本というのが、中国共産党の国際宣伝文句である。そして、安倍政権は、この歴史の審判を覆し、甦りを期すファシスト勢力という位置づけになる。

例えば2014年9月27日、中国の王毅外相は、国連総会で一般討論演説を行った際、「来年は反ファシスト戦争に世界が勝利して70年目に当たり、歴史上、特に重要な年になる」とし、「歴史的な事実は明々白々であり、何が正しく、何が間違っていたのかの最終審判は既に下されている」と強調している。

また、安倍政権を暗に指しつつ「侵略を否定し、歴史をゆがめようとする者に逃げ場を与えないよう、正義と良心を共に維持しよう」と各国に呼びかけてもいる。 

ここで、一つの参考事例を想起したい。

旧東ドイツの共産党独裁政権は、ベルリンの壁を「反ファシスト防護壁」(Anti-Fascist Defense Wall)と呼んだ。実態は、圧政から住民を逃がさないベルリンの「檻」だったにも拘わらず、である。 

「反ファシスト」なる掛け声が、いかなる勢力によって、いかなる事態の正当化に用いられてきたか、来年の第二次大戦終結70周年「歴史戦」に備え、日本政府は事例を集積し、適宜反論に用いる必要がある。