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2015.07.17 (金) 印刷する

なぜ韓国人は自明のごとく戦時期の被害者性を語るのか 鄭大均(首都大学東京特任教授)

 日本外務省は朝鮮人労働者の戦時動員の実態を広報せよ、という西岡力氏の意見(「今週の直言315回」)に賛成である。西岡氏は朝鮮人労働者の戦時動員の実態について5点ほどを記しているが、より基本的な問題に注意を喚起したい。
 それは1910年~45年の35年間、朝鮮人も日本国民だったのだということが韓国ではほとんど知られていないということである。近年、戦時中の朝鮮人の被害者性にまつわる韓国からの批判がくり返されているのは周知の通りだが、それはなぜなのか。私見によれば、それは彼らがかつては日本国民だったということを忘れているからで、日本人が韓国人を日本人たちの戦争にかり出したのはけしからんというのがその心理であろう。
 しかしその実、1910年~45年の35年間、朝鮮人は日本国民であった。そもそも、朝鮮人労働者はなぜ戦時に動員されたのか。それは内地人(日本人)への徴兵が拡大し、それによって生じた労働力不足を埋めるためであったが、それを可能にしたのは彼らが日本国民であったからである。むろん、そのことは朝鮮人労働者のなかに、炭鉱や建設現場といった劣悪な労働環境で過酷な労働を強いられた人間がいたことを否定するものではない。
 しかし、それをいうなら、内地人の男たちは戦場に送られていたのであり、徴兵による犠牲者性はいうまでもなく徴用によるそれよりも高いのである(朝鮮人にも志願兵制度があり、1944年以後は徴兵の対象にもなった)。にもかかわらず、韓国人は戦時期の被害者性や犠牲者性を自信満々に語るのだが、その背景にあるのは日本国民だったという前提の欠如ではないだろうか。
 1910年~45年の35年間を近年、韓国人は「日帝強占期」と呼ぶ。「日本帝国主義がわが国を強制的に占拠した時期」の意であり、「併合」は不法であり、無効であり、したがって当時の朝鮮人が日本国民であったという前提は成立しないと韓国人はいうかもしれない。しかし日本政府がそれに同調する必要はない。朝鮮人労働者の戦時動員とは当時の国民としての義務であったのであり、不当なものではなかった。
 しかし、かつて朝鮮人が日本国民であったということは日本でもよく知られているとはいえないし、それを明瞭に語ることを避けてきた空気もある。問題は「強制連行論」や「強制労働論」の問題で韓国政府と向きあう外務省の役人の態度であるが、韓国に対する贖罪意識のゆえに、それを明言することを避け、それゆえに、韓国政府の自信満々の被害者意識の発揚に結果的には寄与してしまったという経緯がなかったのだろうかと思うのである。
 1910年~45年の日韓併合期をいかに評価するかは、今や日韓の最大の政治的争点である。日本人はこの時代について、いつになく意見を表明する機会が与えられているのである。だが、その日本人に「日韓併合期」などといっても、ピンとくる人が少ないのだから、困ったものである。どうしたらいいのだろうか。ということで筆者が準備した本がある。『日韓併合期ベストエッセイ集』(ちくま文庫)という本がそれで、この本は日韓併合期を知ることが、思った以上に貴重な体験であることを知ってもらうための本である。