7月28日、安保法案の審議が参議院の特別委員会で本格化した。民主党は、集団的自衛権行使をめぐる安倍政権の立場が、過去の国会答弁や法制局見解などと矛盾していると追及した。下に引いた時事通信の記事に「安倍晋三首相は防戦に追われた」とあるが、現象的にはその通りだろう。
特に居丈高かつ粘っこく、確たる証拠を手にした総会屋のような迫力を持って政府を追及したのが民主党の福山哲郎議員だった。「教科書にはこう書いてある」と、教師の含みを持たせた解説に食ってかかる小学生のような正しさと言ってもよい。
「国の交戦権はこれを認めない」と記した現行憲法の枠内で、また過去の政府答弁との整合性を最低限確保しつつ、中国や北朝鮮、国際テロ勢力の脅威に現実的に立ち向かう法制を得ようとすれば、理路整然といかないのは当然だ。
揚げ足を取るのは実に容易で、難しいのは、建設的な対案によって政府案の不備を正していくことだ。それこそプロの政治家に求められる所だろう。
敵に照準を合わせようとする戦士の鼻先を掻き回し、集中力を削ぎ、エネルギーを消耗させて、ハエは得意なのだが、ハエは所詮ハエ、戦士は戦士である。
民主党は、ハエ集団としての存在誇示で満足するのか、それとも責任ある政治集団として難局に取り組む姿勢を見せるのか。福山氏の「活躍」に手をこすり合わせて喜んでいるようでは、ハエ人間からの脱皮は前途遼遠と言わざるを得ない。
参考記事を下に掲げておく。
《時事2015/07/28
■民主、「法的安定性」追及=安倍首相は防戦-安保審議
参院での安全保障関連法案の審議が28日の特別委員会で本格化した。民主党は「法的安定性」に照準を合わせ、集団的自衛権行使をめぐる安倍政権の立場が過去の国会答弁などと矛盾していると追及。「法的安定性は関係ない」と発言した礒崎陽輔首相補佐官の更迭も重ねて求めた。安倍晋三首相は防戦に追われた。
民主党の福山哲郎幹事長代理は同日の質疑で、政府が集団的自衛権の行使を否定した1972年の見解を変更したことをただした。「基本的な論理は維持しつつ、72年見解の当てはめを変えた」と述べた首相に対し、福山氏は「これが法的安定性を損なうことではないか」と反発、「ご都合主義の当てはめの論理」と断じた。
法的安定性とは、安定的な法の適用を確保することで、法に対する信頼を保護する原則。憲法学者から安保法案に対し、「法的安定性を欠くため違憲」との指摘が相次ぎ、報道各社の世論調査で内閣支持率は軒並み急落。こうした中で礒崎氏の発言も飛び出し、民主党は「安倍政権の体質を浮き彫りにするチャンス」(幹部)と捉えた。
安倍政権は、集団的自衛権行使を否定した過去の政府答弁などが、全面的な行使を念頭に置いていると主張してきた。これに関し、福山氏は2004年の政府答弁書や86年の内閣法制局長官答弁などでは限定的な行使も明確に否定していたことを指摘。さらに福山氏は、礒崎氏の更迭を要求したほか、横畠裕介内閣法制局長官にも矛先を向け、「解釈変更を許したことは万死に値する」と非難し、辞任を促した。……》