先ず、「平等」という観念について。ついでに「自由」についても合わせて考えてみよう。真の「平等」も「自由」も絶対にありえない。何をどうひっくり返そうと、ひねくり回そうと、我々はそのどちらも我が物には出来ない。
そもそも、何人(なんぴと)も同じ才能を持って生まれることは出来ない。そのことだけ考えても、我々が平等に生まれついてはいないという現実、また、自分の持って生まれた能力や肉体から逃れたり、それらを越えたりする自由は与えられていないという現実は否定できまい。つまり、人間は絶対に自分という殻(枠)から逃れることは出来ないし、その自由も全くない。従って、元に戻るが、平等に生まれつくことも絶対にない。
そのことが分かった上で、選挙権における平等についても、我々は取り敢えず、まあ大人と認められる20歳を基準として来たのであり、今回18歳にそれを一律に引き下げたわけだ。そして、確かに年齢というものは平等概念の「目つぶし」としては、はなはだ便利な物差しには違いない。もう少し穏やかに言うなら、最も文句の付けにくい基準だろう。
しかし、例えば、酒を飲んで河川敷で無抵抗の中学生を凄惨な方法で殺す18歳と、高校(或いは中学)を出て懸命に働き、夜学に通いつつ家計の一助ともなろうという18歳とを同列に扱うことには、私は違和感以上のものを感ずる。そこで――選挙権に関して、私が「納税」という基準を持ち出したら、読者は違和感を感ずるのだろうか。
極論、中卒の15歳であっても、社会人として働いているものには投票権を与え、20歳になろうと、親の脛をかじりアルバイトで稼いだ金で海外旅行を楽しんでいる大学生には選挙権は与えない。前回書いた通り、就活を経験した学生たちが一様に大人びて来て、例えば安保法制等々についても、意見をはっきりと表明できるようになって行く様を見るにつけ、何らかの形で社会に、ひいては、納税と勤労という形で我が国に貢献した者にこそ選挙権を与えるというのも、「平等」の一つの基準になり得ると私は考える。
15歳が極端だというなら、例えば、選挙権を20歳に据え置き(あるいは22歳に引き上げ)、同時に、18歳から20歳(もしくは22歳)までは社会人としての納税の有無によって選挙権を与えるという両建ての折衷案も考慮の余地があるのではないか。
再度言うが、我々は「取り敢えずの平等」で納得しているだけのこと、この世に「真の平等」がない以上、「納税」という基準の導入を考えてもいいではないか。私のこの「暴論」、たかだか法律の門外漢の戯言に過ぎないかもしれぬ。が、この論に反論するとすれば、精々「事務手続きが煩雑だ」というくらいだろう。
マイナンバー制度もスタートした。この制度、私には疑問が大ありなのだが、普及すれば、納税の有無による選挙権付与の手続きなどいとも簡単に出来るはずだ。近頃話題のフィンテック(FinTech)をもじって、ピンテック=PIN(Personal Identification Number) Tech(=マイナンバー・テクノロジー?)などというものが生まれて、何もかも一枚のカードでこと済む社会が到来するかもしれない。以上、私の単なる夢想に過ぎないのだろうか。国民に国防の義務を課してすらいない我が欠陥憲法でも、納税の義務は謳っている。その義務すら果たしていない、脛かじりの高校生にまで投票権を与える必要があるのだろうか。
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