今の生徒・学生が投票権を行使するだけの知識、判断力が備わっていないのではないかというご指摘はその通りであろう。今回の改正にあたっても、選挙権年齢を引き下げるよりも、むしろ引き上げるべきではないかという意見があったのも事実だ。私も機会を見つけては、高校生や大学生など若い人たちと接するように心がけているが、この中で感じることは、政治的な関心がある層と無関心層の二極化が進み、個人差が大きくなっているということだ。各々の置かれている環境によっても大きく左右されるであろう。社会人として働いている者は自ずと納税者意識も芽生えてくるだろうし、親が政治的関心をもっているかどうかなど家庭環境によっても違ってくると思う。
ただ、大事なことは、政治に関心のない若者に選挙権を与えても意味がないと諦めるのではなく、選挙権年齢引き下げをきっかけに、若者が政治や選挙に関心をもち、主権者としての自覚をもつために、今後何をしていかなければならないのかである。
私は、シテイズンシップ教育推進の議員連盟を立ちあげるなど、主権者教育の重要性を訴えてきた。我が国の公教育の場における政治教育は、政治的中立を重視するあまり、過度に抑制されてきたのではないか。今回の法改正を受けて、文部科学省は、昭和44年の高等学校における政治活動についての通知を見直し、新たな国家及び社会の形成者として必要な政治や選挙への関心を高め、政治的教養を豊かにするための教育の充実を図るための通知を発出した。また、文科省と総務省による副教材も作成された。既に、デイベートや模擬選挙、インターンシップ、新聞の活用など多くの実践例もある。こうした事例も検証しながら、主権者教育を実効的なものにしていかなければならない。
そして、高校生に対する教育だけでなく、小中学校段階も含めて、切れ目のない主権者教育が必要ではないかと思う。学校現場が中心となるが、学校、教員任せにせず、家庭、地域、自治体も含めて、広く社会全体として積極的に政治教育に参画できる態勢作りも必要である。
少子高齢化が進み、人口減少の時代を迎えた中で、膨大な財政赤字、社会保障費の増大をどう抑えていくのか。若い世代の投票率が上がれば、投票率の高い高齢者の意向が政策決定に反映されやすい“シルバーデモクラシー”の是正につながることも期待される。このためには、私たち政治家、政党の側も、教育や子育て、若年層の雇用問題などについて発信し、20年、30年後の未来を見据えた政策を競い合うことで、若い世代が政治的関心をもち、積極的に参画するための努力をしていかねばならない。
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