今日(5月2日)の産経新聞に、櫻井よしこ国基研理事長が、岸田対中外交を批判して次のように書いている。
《岸田文雄外相に、王毅外相は北京で4月30日、ニコリともせずに言った。「中日関係は度々谷間に陥った」「その原因は日本側が一番よく分かっているのではないか」。一方的な対日非難に等しい不遜な主張の王毅氏に、岸田氏は「両国外相の往来が途絶えていることは望ましくない」と、穏やかに返した。居丈高になる必要はないが、日本外交はこんなことでよいのか。》
岸田氏は、王毅外相の対応を予想し(十分予想できた)、気の利いた切り返しの一つぐらいは用意して臨むべきだった。外務官僚のシナリオ通りに動くだけなら、無難な能吏に過ぎない。抑圧的な全体主義国の党官僚を相手にしているという理念的意識が希薄すぎるだろう。
ところで、野党はなぜ岸田氏の対中「気弱外交」を批判しないのか。
1989年の天安門事件後、米議会は「政府高官同士の接触禁止」を含む制裁措置を議決し、大統領も同意したが、その裏で当時のブッシュ父政権は、スコウクロフト国家安全保障担当大統領補佐官とイーグルバーガー国務副長官を密かに中国に派遣し、制裁は一時的で米中関係を早期に正常化したい旨伝えていた。中国側としては、当然、人権問題にアメリカは本気でない、路線変更の必要はないと見切ったであろう。
1992年の大統領選の際、野党民主党のビル・クリントン候補はこのブッシュ政権の無理念・弱腰外交を厳しく叩いた。そして、大統領就任後も、クリントンはしばらくの間、対中強硬路線を維持した。その後宥和路線に移行してしまったとは言え、クリントンは野党政治家としての責任を果たし、実際の政策にもそれを一応反映させたと言える。
翻って日本の野党政治家はどうか。岸田対中外交を批判する声はほとんど全く聞こえてこない。これでは、仮に政権に復帰しても、岸田路線より悪くなることはあっても良くなることはない、と見切らざるを得ないだろう。
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