北朝鮮が6月22日、新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」を発射、報道によれば高度は1000キロ以上に達し、約400キロ先の日本海に着水した。
ムスダンは射程約4000キロであるため、まともに発射すれば日本の上空を通過することになってしまう。1998年8月31日に北朝鮮は、人工衛星の打ち上げと称して日本の上空を越えて長距離弾道ミサイル「テポドン1号」を発射したが、その直後に日本は、米国との弾道ミサイル防衛協力に参画し、自前の情報収集衛星(偵察衛星)を打ち上げている。従って今回、北朝鮮は日本の上空を通過させず、上に高く飛ばすロフテッド軌道で発射実験したようだ。
垂直に落下してくれば重力も加わり、空気抵抗のある大気圏内を水平方向に飛ばす通常軌道よりは弾道ミサイルの速力が早くなるため、それだけ迎撃は困難になってくる。そのため海上自衛隊が保有しているイージス艦の迎撃ミサイルSM-3ブロックIAよりは、現在日米で共同開発中のブロックⅡAの方が、迎撃速度も早くなり撃ち墜とし易くなるであろう。
今回の発射実験では、北朝鮮が弾道ミサイルの大気圏再突入技術を入手できたという意味合いが大きい。元来ムスダンは旧ソ連の潜水艦発射弾道ミサイルであるSS-N-6が原型であり、2012年4月の軍事パレードで出現したKN-08や2015年10月のパレードで出現したKN-14も同じグループと考えられる。
ちなみに、これらの移動用の輸送起立発射機は中国航天科工集団公司が輸出している。使用燃料は非対称ジメチル・ヒドラジンという有毒物質であるため、仮にミサイルの一部が日本の本土に落下したとしても、近づかない方が良い。
北朝鮮が武力攻撃を決断した場合、まず米戦略爆撃機の基地であるグアム島を攻撃するであろうことは、北朝鮮が朝鮮戦争で米爆撃機に苦しめられた事からも容易に想像できる。そのための弾道ミサイルがムスダンであるが、発射直後の段階ではグアム島か日本に向けられたか判断できないため、海上自衛隊のイージス艦は、これを撃墜することになるであろう。その意味では昨年成立した平和安保法制における「存立危機事態」適用の第1号になるかもしれない。
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