7月14日付朝刊の各紙トップ記事は、今上陛下が「生前退位」の御意向を宮内庁関係者に伝えていたと報じる内容であった。宮内庁は、そのような事実はないと否定しているので、真偽のほどはわからない。
生前退位ということになれば、当然、皇室典範の改正が必要になる。ただ、陛下の御公務が多く、御高齢に対する健康への配慮が必要であるということが理由なら、摂政を置くなど、現在の皇室典範の規定内でも御負担軽減の対応は可能だ。
生前退位(譲位)は、古来多くの先例があるが、第119代光格天皇が、文化14年(1817年)、仁孝天皇に譲位されたのが最後である。明治以来、制度として認めないこととした。これは多くの議論を重ねてそのようになったのであり、理由がある。この点の改正は慎重にも慎重を要する。
しかし一方、皇位の継承、皇室の永続性の観点からは、皇室典範の改正を急がなければならない面もある。現在、皇位継承順位の第1位は56歳の皇太子殿下、第2位は50歳の秋篠宮さま、第3位は秋篠宮御夫妻の長男、9歳の悠仁さまである。その先は、悠仁さまの御子孫に期待するほかない。
そこで、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承とする。」との皇室典範の規定を変更して、女系を含むものとすべきだとする意見が出されている。しかし、男系は皇室の伝統であり、女系を認めた例は歴史上一度もない。歴史上一度もないことを変更することは、歴史上の存在である皇室の存在意義そのものを失わせることになりかねない。
皇族の範囲が少なすぎることにも原因がある。皇室典範を改正する場合には、皇族の範囲拡大、即ち旧宮家の復活なども検討すべきだ。
皇族の御公務軽減のために、女性宮家を創設すべきであるとする考えもあるが、これも男系による皇統の維持がまずは前提だ。宮家を増やして皇室の安泰を図ることは急務であるが、この機をとらえて女系天皇を認める議論につなげようとする動きには注意が必要だろう。
「皇室典範の改正は慎重に、かつ迅速に」と主張する所以である。
国基研ろんだん
- 2026.01.13
- 防衛相の「五つ星」は世界の物笑い 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
- 2026.01.05
- 既視感ある米の軍事行動 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
- 2025.12.22
- 我が国は兵器級プルトニウムの在庫ゼロ 奈良林 直(北海道大学名誉教授)
- 2025.12.15
- 米国覇権の終焉と日本の新たな役割 岩田清文(元陸上幕僚長)
- 2025.12.08
- 防衛力強化を「軍拡」と言うNHK 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
- 2025.12.02
- 佐渡の朝鮮人戦時労働「強制」説否定される 長谷亮介(麗澤大学国際問題研究センター客員准教授・歴史認識問題研究会研究員)
- 2025.11.25
- 石垣島の核シェルター準備を視察した 奈良林 直(北海道大学名誉教授)
- 2025.11.12
- 高市政権の「農政復古」 山下一仁(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
- 2025.10.21
- 憲法9条解釈と文民条項導入との不可離性再論 西修(国基研理事・駒澤大学名誉教授)
- 2025.10.20
- 高市氏に期待するリアリズム外交 湯浅博(国基研企画委員兼研究員)





