中国はならず者超大国。この表現は、今回の南シナ海に関する仲裁裁判所の裁定を無視する中国のことを表現した言葉ではない。2010年に海上保安庁の巡視船に体当たりした中国漁船の船長を拿捕した際、日本へのレアアース(希土類)輸出を制限した中国に対して、ノーベル賞経済学賞を受賞したポール・クルーグマン博士が米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿した中で述べている言葉である。
法によって行動しようとしない中国に対して宥和政策を適用することは、さらなる拡張を助長することとなり、却って軍事衝突の危険性を増しかねない。国際司法機関の判決結果を国連安保理の常任理事国が無視するということは、国際社会を構成する重要な名誉に汚名を着せられることになる。法を無視して拡張を続ける中国に対しては、まずは経済制裁を、それでも拡張を止めない場合には、海賊対処のような国際社会の連携で対抗すべきではなかろうか。
海賊に対処する国際社会の枠組みとしては二つのモデルがある。
一つは、マラッカ海峡周辺の海賊に対処するために十数か国が参加している「アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)」で、沿岸警備隊を保有していないために海軍を出しているミャンマー、スリランカ、タイを除いて、各国の沿岸警備隊・警察のような海洋法執行機関で構成される枠組みである。
もう一つは、アデン湾周辺の海賊に対処する合同任務部隊(CTF151)に順じた枠組みだ。CTF151には、日本を含む約10か国の海軍艦艇・航空機が参加しており、2015年の一時期は、海上自衛隊が指揮官(海将補)も派遣している。
目的が南シナ海の環境保全のような場合であれば、沿岸警備隊や水上警察でも良い。しかし、中国は南シナ海で国を挙げての大規模な環境破壊を行い、かつ西沙諸島には対空ミサイルを既に配備し、戦闘機も飛ばしている。法執行機関中心の国際的枠組みでは対処できないほどに大規模になってしまったことを考えると、CTF151のような海軍主体の枠組みが必要ではなかろうか。
その場合、南シナ海の航行の自由に国益を有している日本や米国、豪州、韓国などの国以外にも、法秩序を守るという観点から、CTF151に参加している英国、フランス、オランダ、デンマークといった北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国も加わることが望まれる。その意味では、15、16の両日、モンゴルの首都ウランバートルで開かれるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議における安倍晋三総理の手腕が期待される。
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