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2016.08.08 (月) 印刷する

北のミサイルには常時即応態勢が必要だ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 8月3日、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、うち1発が日本の排他的経済水域である秋田沖に着弾した。今回の発射は、発射台からの発射ではなく、輸送起立発射機(TEL、16輪のTELは中国が北朝鮮に輸出)から発射されたためか、事前の兆候察知ができなかった模様である。
 また北朝鮮は、これまでの液体燃料から即応性に優れた固体燃料の弾道ミサイル、トクサを開発しており、益々事前の兆候察知は難しくなる。さらに5日の韓国報道によれば、北朝鮮は1発目をわざと失敗させ、これに相手方のミサイル防衛用レーダービームのエネルギーを集中させておいて、本来発射させたいミサイルをその直後に発射させるといった欺瞞工作を行った模様である。
 中国も沿岸域にMiG-17やJ-6といった1950年代〜70年代の古い戦闘機を無人機に改良して6地点に約200機を分散配備、これらに日米の弾道ミサイル防衛弾を使わせて、弾がなくなった頃合いを見計らって本来の弾道ミサイルで攻撃しようと準備を行っている。
 これまで政府は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射する兆候を偵察衛星で事前に察知して「破壊措置命令」をその都度出していたが、TELから即発射できる状況になったことから、今後は何時発射されても対応できるように、常設の任務部隊で即応態勢をとる必要が生じる。
 本州と沖縄を含む南西諸島全てを防御するためには、常時日本海と東シナ海にイージス艦を展開しておかなければならない。1隻の艦を常時展開させるには、修理、錬成訓練と往復のため3倍の隻数が必要となってくる。現時点において、海上自衛隊が保有しているイージス艦は6隻であるのでギリギリの運用を迫られる。
 こうした緊迫した情勢にもかかわらず、野党は先の参議院選で、厳しい安全保障環境について殆ど触れず、第1党の民進党は究極的に自衛隊を無くそうと主張する共産党と手を組んだ。一方で自衛隊員数は過去一貫して増えていないし、防衛予算に関しても4年前までの10年間はマイナスの伸び率であった。いつまで対国内総生産(GDP)比1%以下の防衛費で済ます積りか。日本は正念場を迎えている。