先週は尖閣諸島周辺に約300隻の中国漁船が集結、そのうち2桁の漁船が領海内に侵入した。これら漁船の多くに、定期的に軍事訓練を受けている海上民兵が乗り組んでいることは間違いない。その海上民兵の恐ろしさについて、日本国内では余り認識が進んでいないように思われる。
過去、中国の海上民兵が紛争の尖兵となった事例が多い。まず1974年にベトナムからパラセル(西沙)諸島を奪取した海戦、次に1978年尖閣諸島周辺に100隻以上の武装漁船群が集結して威圧。さらに中国側は、2009年に米調査船インペッカブルに対して南シナ海の公海上で進路を妨害、2011年にはベトナム調査船の活動を妨害した。また2012年にフィリピンからスカボロー礁を強奪した事案でも中国漁船が尖兵役となった。
海上民兵の総数についての情報は少ないが、本年6月に米国の海軍分析研究所が纏めた出版物によれば、1978年の時点で75万人14万隻とされている。
彼等の任務は、情報提供から機雷敷設や軍艦の消火活動といった戦闘支援活動等多岐にわたっている。このうちの情報支援に関して言えば、漁船の殆どは中国版GPSである北斗衛星システムの端末を搭載しており、その端末から短文のメッセージを当局に発信できる。例えば、自船の何度何マイルの位置に敵軍艦や公船が存在するといった情報である。
日露戦争の日本海海戦前に日本の信濃丸がバルチック艦隊を発見してその位置情報を通報したことで東郷艦隊が出撃したが、中国漁船全てが信濃丸の役割を果たしていると考えれば良い。
機雷敷設のような活動は戦闘行為であるから攻撃されても文句は言えない。しかし攻撃を受けたら「軍艦が無辜の漁船を攻撃した」と国際社会に発信して南京事件(軍服を脱ぎ捨て一般市民の服装をして武器を隠し持ち、相手が後ろを見せると攻撃する便衣兵の処断を、一般市民を大虐殺したと宣伝)の海上版にしかねない。さらには、数が多いために軍艦にとっては排除するには弾を大量に消耗することとなり、実に厄介な存在なのである。
すなわち、毛沢東の人民戦争を海上で行うのが海上民兵と考えれば良いであろう。
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