中国の東シナ海侵出が危険レベルまで達している。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域に300隻ほどの漁船団が押し寄せ、漁船団を警固するように15隻もの中国公船が日本の管轄海域に侵入した。その勢力は、海上保安庁の尖閣諸島専従部隊の12隻相当体制を上回っている。
中国は、南シナ海でフィリピンからミスチーフ礁、スカボロー礁を奪った時にも、まず先に漁船団を送り込んできた。そして、漁民の保護を名目に軍艦や警備船が現れ、海域を占領してしまったのだ。尖閣諸島においても、同様な動きが見え始めた。
仮に中国漁船が、荒天を理由に尖閣諸島に押し寄せ上陸を始めたら、どうなるのだろうか。これまでの事例から推察すると、中国公船が前面に出てきて、日本の海上保安庁と対峙することになる。そして、中国政府は、国の内外で中国人民による反日活動を扇動し、尖閣諸島において領土問題が存在することを日本政府に認めさせようとするだろう。
日本政府は、断固として日本海域での中国の不法行為、越権行為を許してはならない。毅然とした態度が必要なのだ。
2010年、海保の巡視船に中国漁船が突撃する事件が起きたが、当時の民主党政権は中国の顔色をうかがい、犯人である船長を処分保留で帰国させた。この軽薄な処置を見た中国政府は、畳みかけるように尖閣諸島侵出に乗り出した。
2012年、中国の攻勢に危機感を感じた東京都の石原慎太郎知事(当時)は、政府に国土を守る覚悟を求めるため尖閣諸島を東京都が買い取る計画を発表した。この事に敏感に反応したのは、日本政府より中国政府であった。実行力のあるリーダーの下、海洋管理の専門家が付き、国際法に合致した尖閣諸島の管理体制が確立するところだったのだ。
中国は、さまざまな手段で東京都の尖閣諸島買い取りを妨害した。中国にシンパシーを持つ政治家や評論家は、「石原知事が外交に口を出した」と非難を繰り返したが、これは尖閣に領土問題があるという前提である。むしろ、石原知事は、領土保全という内政の充実のため、政府に覚悟を迫ったのだ。仮に東京都による買い取りが実現していれば、魚釣島を国際的な海洋環境研究の中心にする計画があった。国際的な環境保護の中心施設であれば、中国政府は手も足も出せなくなる。
今からでも遅くない。政府は、尖閣諸島に国際的に認知される海洋・島嶼に関する研究拠点を設け、島々の管理を進めるべきである。南シナ海問題における仲裁裁判所の判断では、中国の人工島建設による海洋環境破壊が糾弾されている。「環境」は、世界における海洋管理のキーワードだ。南シナ海の仲裁裁判断で、世界が注目している今だからこそ、国際法に合致した島嶼管理=尖閣諸島管理を進めるチャンスなのである。政府には、日本の平和な未来を見据えた英断を求めたい。
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