韓国が朴槿恵大統領の弾劾をめぐって揺れている。ここで注目したいのは、韓国憲法における弾劾制度の欠陥である。
アメリカの場合と比較してみよう。弾劾、すなわち大統領を任期途中で解職する事由に当たるのはあくまで個人としての犯罪であって、政権の政策ではない。この点は韓国も米国も同じだ。議院内閣制における内閣不信任とは制度の趣旨が違うわけである。
ちなみに、アメリカでは、下院が検事役となって過半数の賛成で訴追し、上院が裁判官役となり出席議員の 3 分の 2 が賛成すれば大統領弾劾が成立する。しかし、その場合、憲法の規定で副大統領が後継大統領となって残余の任期を全うするため、政権全体としての継続性は担保される。
ところが韓国では、大統領が弾劾されると、政権全体がつぶれ、大統領選挙(60 日以内)になだれ込むことになる。これは個人の犯罪追及という制度本来の趣旨に合致しない。
仮に、名は弾劾でも内閣不信任に近い制度というなら、政権の側にも、議会を解散して国民の信を問うという対抗手段が用意されていなければならないが、韓国憲法にはその規定はない。この制度的欠陥を親北勢力に突かれたのが現在の韓国の姿だと言える。
アメリカでは、仮にドナルド・トランプ次期大統領が就任後に弾劾されれば、副大統領となるマイク・ペンス氏が大統領となり、かえって共和党政権としては安定するのではないか。そのことが、左翼陣営による安易なトランプ弾劾への抑止力ともなっている。
かつて 1998 年 12 月、当時のビル・クリントン大統領(民主党)が、女性問題をめぐる虚偽証言と捜査妨害(perjury and obstruction of justice)のかどで、野党共和党多数の下院に弾劾訴追されたものの、 1999 年 2 月、上院の投票で3 分の 2 に達せず、不成立となったことがある。
この時、共和党内にも、クリントン氏を弾劾すれば、副大統領のアル・ゴア氏が跡を継ぎ、現職大統領として 次の2000 年大統領選挙に臨むため、かえって共和党候補が不利になりかねない、弾劾追求ではなく大統領譴責決議くらいが望ましいと深追いを戒める声もあったという。
ともあれ、憲法の不備による韓国の混乱は、日本にとって他人事ではない。9条などに因る防衛欠陥は、より危うい形で危機を深く潜行させているのかも知れない。
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