北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」と、韓国の左派系「ハンギョレ新聞」、保守系「朝鮮日報」「東亜日報」「中央日報」が、朴槿恵大統領たたきで全く同じ報道をしている。だから11月23日の労働新聞社説は韓国の新聞・テレビを激賛した。
●「朴たたき」と「日本たたき」
韓国保守を代表する知識人、趙甲済氏は次のように語っている。
「保守新聞を含むマスコミがあまりにも多くの誤報をしたため、お互いかばい合って相互批判をしなくなっている。その結果、朴槿恵をたたく記事なら、なんでも大きく扱うというおかしなことになり、それにひきずられて左派ではない一般国民も反朴槿恵デモに集まり、その数をまたマスコミが検証せず実態の5〜10倍に膨らませて100万人、200万人などと報じ、与党を含む国会と検察がそれに引きずられて朴槿恵たたきをしている。これは一種の全体主義だ」
趙氏の話しを聞いていて、私は北朝鮮と韓国の左右両派が同じ報道をする事例を思い出した。それが日本たたきだ。1982年の教科書事件のとき、私はソウルの日本大使館で専門調査委員として、毎日、反日記事をスクラップしていた。誤報だらけで相互批判がなく、北朝鮮と中国共産党に歩調を合わせる日本たたきだった。1992年の慰安婦騒動も全く同じだった。
●反論控えて問題が拡大
2つとも事実に即して反論すべき日本側がそれをしなかったことが問題を大きくした。むしろ日本たたきの材料を朝日新聞などが捏造報道で提供し、日本政府が調査もせずに先ず謝罪して、検定基準の変更や支援金の支給など大幅な譲歩をしつづけた。それが事態を悪化させた。
その結果、韓国人の多くは、いまだに慰安婦は性奴隷だったと信じている。慰安婦問題の真の解決は、慰安婦は軍が管理した公娼制度で彼女らは貧困の結果、慰安婦になったという事実を韓国人の多数が受け入れることだ。そのためには、事実に基づく反論が不可欠だ。ついに昨年8月、李栄薫ソウル大学教授が学問的勇気を持ってネット上で、「慰安婦は軍が管理した公娼制度で性奴隷ではない」と実証的に発言した。
今回、釜山の日本総領事館前に新たに慰安婦像が設置されたことを受け、安倍晋三政権が大使と総領事の一時帰国、スワップ協議の中止などを打ち出したことは、正当で当然の措置だ。2015年12月の合意では韓国の尹炳世外相は「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と明言した。しかし、釜山の慰安婦像を不法に設置した左派団体に対して韓国政府は一度も協議の申し入れをしていない。「関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」という約束を履行していないのだ。安倍政権は少なくとも尹炳世外相が釜山に行って関係団体と協議するまでは、今回の措置を続けるべきだ。
●韓国側に関係修復の動きも
今回の措置の結果、左派新聞は加害者である日本が被害者である韓国を圧迫するのは許せないと安倍政権への非難一辺倒だが、朝鮮日報と東亜日報は安倍政権批判をしながらも、社説でウィーン条約を紹介して韓国側にも非があることを伝えはじめた。
在野の保守団体である国民行動本部は「少女像をめぐる韓日関係悪化を憂慮する」という声明を出して「釜山の日本総領事館の前に『慰安婦少女像』を再設置したことは韓日間合意精神に背くだけでなく何よりも不法行為だ。文明国家としての国の格を守るためにも法の通りしなければならない。 政府は『慰安婦少女像』を撤去して韓米日同盟関係を修復しなければならない。」と主張した。
日本が自己主張をすることが、韓国人に自分たちのやっていること、信じていることがおかしいのではないかと考えさせる契機を与える。真の日韓友好は健全な相互批判の上にしかないと強調したい。