「左警戒右見張れ」。船乗りの警句で「一点に集中するな」という意味である。朝鮮半島情勢が厳しさを増している今日、ともすると中国情勢が見過ごされやすい。しかし、こうした中で中国は4月20日に無人宇宙貨物船「天舟1号」を搭載したロケットを海南島文昌の宇宙センターから打ち上げ、22日には実験室「天宮2号」に第1回目のドッキングを完了した。この軍事的意味合いについて考察してみたい。
●宇宙ステーションは衛星攻撃兵器に
中国は2018年頃には、重量60~70トン規模の宇宙ステーションを構築するための基本的な資材の運搬を企図し、2022年頃には宇宙ステーションを完成させることを目指している。これらは人民解放軍が西側諸国の低軌道周回衛星(Low Earth Orbit-LEO-)をレーザー等のエネルギー兵器で攻撃するための宇宙船となりうる。
旧ソ連でも、運用していた宇宙ステーション「アルマース」には機関砲が搭載され、地上からの遠隔操作で衛星を攻撃することに成功している。無誘導ミサイルが搭載された機種もあった。
日本の情報収集衛星や通信衛星の一部もLEOの範疇にあり、攻撃の対象になりうる。したがって、こうした攻撃から衛星を守るためには、防御的な手段として探知されにくい小型衛星を数多く保有する必要が出てくる。
冷戦時代、旧ソ連が中距離弾道ミサイルSS-20を欧州東部に配備した時に、西側はパーシングII弾道ミサイルを配備することをバーゲニングにしてSS-20配備を断念させたように、これに対抗するためには日米も有人、あるいは無人の航空機で、同様にレーザー兵器を搭載する能力を開発する必要がある。しかし日本はこうした衛星攻撃兵器を開発・保有できるのか、専守防衛の政策や憲法上の制約が無視できない。
●月面に軍事基地建設の恐れ
中国紙、京華時報は専門家の話として「月にミサイル基地を建設すれば反撃の心配なく相手の軍事目標を攻撃できる」と指摘、国防関係者も「月面に武器試験場や軍事ロケット燃料庫、ミサイル発射基地を建設する」と語っている。
また、中国のメディアでは月面基地の完成図にロケット発射台と思われるものが描かれている。いくら宇宙条約が「平和利用の原則」を謳っていても軍事利用の可能性を認識して置かなければなるまい。なにせ相手は、「南シナ海の人工島軍事化はしない」と約束しつつ、対空ミサイルや軍用機を飛来させる国なのだから。